映画「カム・アンド・ゴー」の一場面 ©️cinemadrifters

映画「カム・アンド・ゴー」の一場面 ©️cinemadrifters

2021.11.25

特選掘り出し!:カム・アンド・ゴー 大阪、多言語飛び交う活力

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

9カ国・地域のアジア人が登場、7カ国語以上が飛び交う群像劇。異国の地で働き、学ぶ外国人たちの姿、考えていることをそれぞれの目線のまま明るいトーンでスケッチ。日本が抱える「今」を凝縮させつつ軽やかに描ききった。

舞台は外国人観光客や労働者であふれる平成末期の大阪・キタ。ミャンマー人留学生、ベトナム人技能修習生、ネパール難民、中国や台湾、韓国からの観光客と、日本人の刑事や日本語学校ボランティア、AV会社経営者らの3日間の物語をテンポ良く見せる。

外国人への不当な待遇や搾取、差別意識が常態化する現実は見据えるが、告発や批判する姿勢はとらない。社会のブラックな側面を訴えるより、共に生きているのに正面から交ざり合おうとしない外国人と日本人の姿を、アイロニーとユーモアを込めて映し出す。

リム・カーワイ監督は大阪が持つ活気やディープさが街や人のエネルギーを生み出すことを熟知。人々の息づかいが国籍や言語を超えて行き交うことを切望し、ボーダーレスな世界の魅力を提示する。だから、この映画は人間味たっぷりでめっぽう面白いのだ。2時間38分。東京・ヒューマントラストシネマ渋谷。大阪・テアトル梅田(12月3日から)ほか。(鈴)

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