ひとしねま

2022.12.23

チャートの裏側:映像への傾斜が狭める幅

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

これは大番狂わせではないか。「アバター」の続編が、トップになれなかった。「アバター」1作目の興行収入は156億円。しかも今回は、何と1466スクリーンという前代未聞の上映体制だ。絶大な実績、公開規模のスケール感などから、トップが約束されている作品だった。

興行の成否を握るとみられたのが、映像の革新性だ。映像の革新性とは、よく聞く言葉だが、3D映像の一つの到達点を作った「アバター」の続編ならば、その言葉に信憑(しんぴょう)性はある。確かに、色彩感覚豊かな海底シーンをはじめ、異次元世界へ誘う優れた描写が数多くあった。

ただ、映像の革新性が興行において絶大な威力を発揮するのは、物語との兼ね合いにおいてである。本作は簡略化すると、侵略する側とされる側の二つの勢力の戦いを描く。複雑な構成でないのはいいが、最終盤の圧倒的なバトルシーンを含め、全体的に映像の魅力が突出する。

人は映画に何を求めるのか。まさに人それぞれだろうが、「アバター」続編で一つの形が見えたのではないか。作品が映像の抜きんでた突出性に偏り過ぎると、興行への波及力の幅が狭まる可能性があることだ。映画におけるさまざまな技術革新を経た今の時代だから、一層その感を強くする。本作は、映画を見ることの意味を問うている。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

世界歴代興行収入No.1の超大作となった前作から13年。「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は巨匠J.キャメロン監督自身の手により、人類史上最高の映画シリーズとして新たな奇跡を巻き起こす。

神秘の星パンドラの⼀員となった元海兵隊員のジェイクは、ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、子供たちと平和に暮らしていた。再び人類がパンドラに現れるまでは……。
神聖な森を追われた一家は、〝海の部族〟のもとへ身を寄せる。だが、この美しい海辺の楽園にも、侵略の手は迫っていた……。

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