誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2023.4.13
「パリタクシー」和合由依が推す、幸せな衝撃に笑い泣き! 意外すぎる感動作!
映画の舞台はパリ! 一生に一度は行ってみたいロマンと芸術であふれている街。そんな街の金なし、休みなし、免停寸前のタクシー運転手、シャルル(ダニー・ブーン)。タクシーに乗ってきたのは終活に向かうマダム、マドレーヌ(リーヌ・ルノー)。マドレーヌにお願いされてパリの街を寄り道していると、彼女の過去が明らかになっていきます。
この映画を見てみたいと思ったのは、「私もパリの街を巡ってみたい!」と思ったからです。パリはテレビやコマーシャルでよく目にします。有名なエッフェル塔や凱旋(がいせん)門、ルーブル美術館などがパリを代表する建物ですが、それ以外のたくさんの建物や景色を知りたいと思いました。でもパリにはすぐに行くことができません。
私はポスターにある写真に惹(ひ)かれました。そんなパリの街が気になって選んだ作品なのですが、実際に映画を見てみると思っていたのとは違いとても深い話が繰り広げられます。それはマドレーヌという92歳のマダムがパリで生活したさまざまな場所を通して、彼女の経験を振り返っていくストーリーだったのです。
本作の中で、私がとても好きになったポイントがあります。それは、「カメラの回し方」です。どんなシーンでも、「人と空間」を大事に、うまくカメラに収められているような気がしたのです。見ている私が画面にくぎ付けにされ、吸い込まれるように見てしまいました。
「パリタクシー」の撮影監督はピエール・コットローさん。彼の映像技術に目を見張りました。
そこで、松竹株式会社の映像調整部・洋画調整室室長で「パリタクシー」を日本に買い付けた伯井玲子(はくい・れいこ)さんにお話を伺わせていただきました。(人生で初めて、インタビュアーになりました!)
すごいと思うところは、「撮影方法に最新技術が取り入れられている」というところだと言います。それは、「タクシー内の撮影は、街の中でおこなったのではなくスタジオにある車の四方と天井に4Kのスクリーンをたてて、事前に撮影した街中の映像を流して撮影した」ということです。どういったことなのか、気になりますよね。「室内で撮影する場合、大抵はグリーンバックを利用するのですが、壁一面がスクリーンになっているところに、先撮りしたパリの街の映像を流して撮影をした」というのです。
ちなみに「タクシー内での撮影以外は実際に街に出ておこなった」そうです。
伯井さんは、このことをクリスチャン・カリオン監督と実際にお話しして聞いたと言います。本当に驚きの方法です。
そんな驚きの方法で挑んだ今作。伯井さんは、「海外旅行をするのが難しい今、『海外の空気を吸いたい』、『日本から出たい』そんな感情を持っている人たちに見ていただきたい映画」だと内容について切り出してくれました。
「単純に笑って泣いてスッキリしたい。日常から抜け出してスッキリしたい。生きづらさを感じている。そんないろいろな感情を持って見ても面白い映画。いろいろな要素がこの映画には詰まってる」と伯井さんは、そうも語りました。
「パリタクシー」の魅力は、たくさんの驚きと発見があるところ。「ぱっと見、いわゆる笑って泣けるフランスの感動作なんでしょ、みたいな感じがするけど、驚きがたくさんある、予想外なことが起きる振れ幅が大きいのがこの作品の特徴。思っていたのとは違うものが見られるっていうワクワク感がこの作品のいいところだ」と伯井さんが「パリタクシー」の魅力を教えてくれました。
そして、伯井さんのお仕事にも興味を持った私。普段は聞けない海外映画祭の裏側などについてもお話を伺いました。
伯井さんは「海外映画の買い付け・宣伝」をしています。
映画祭と一緒に映画の売り買いをするマーケットが併設され、私たちの生活で言えば市場の「せり」のようなものが開かれています。「そこでは世界各国の会社が作品を出品しています。その『せり』には、脚本の段階からオファーをするか、作品が完成してから買うのかの大まかに言って二つのパターンがある」
私は驚きました。なぜなら、映画を買うのは作品が完成した段階で行われるものだと思っていたからです。まさか脚本の段階から買うことができるなんて! 思ってもいませんでした。
映画祭では私たちがテレビで見る華やかなレットカーペットや舞台あいさつの裏側で、セールス・マーケットが行われています。伯井さんは外国に行って試写を見たり商談をしたり、一日中動いています。
映画を買い付けたその後は、「宣伝」をします。作品の日本題を考え、キャッチコピーも作るそうで、その言葉が映画の見せ方に影響を与える重要な仕事になります。「題名やコピーによって、作品の受け取り方が変わります。また、広告の見せ方にはとても力を入れている」。「パリタクシー」を、シニア向けの映画にするのか、若者向けの映画にするのか、感動作にするのか、コメディー映画にするかなど、そこで映画の方向性が決まっていきます。
伯井さんのチームは買い付けと宣伝を一貫して行います。伯井さんご自身が「昔、宣伝の仕事をしてその後、買い付けの仕事に就きどちらも経験があったので、今は両方同じセクションで行っている」そうです。「どちらも」となると、なかなか忙しそう・・・・・・。
伯井さんとお話をさせていただいて、洋画の買い付け・宣伝についてたくさんのことを知ることができました。伯井さんのお仕事は毎日が本当に挑戦的です。映画を買うためには多額のお金が必要になり、映画祭やセールス・マーケットに行き、たくさんの作品を見ます。さらに、映画を買い付けた後も多くの人に作品の魅力を知ってもらうために宣伝をしていきます。一本の映画を公開するまでにいろいろなやるべき作業が詰まっています。何か新しいものを生み出すためには、毎日が挑戦的な時間になっていくのだと感じました。映画を公開するまでの過程、そして「パリタクシー」を上映するにあたっての製作の裏話などをお聞きすることができ、たくさんの発見と驚きがありました。とても貴重な経験になりました。
「パリの街が気になる!」「旅行気分になりたい!」「マドレーヌの生き方を知りたい!」など、どんな感情を持つ人が見ても面白い「パリタクシー」。
この春、大きなスクリーンの中に飛び込んでパリの街にお出かけになられてはいかがでしょうか。
現在公開中、劇場でぜひ、ご覧ください。