ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実  © 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

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2021.3.11

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ベトナムの激戦地に身を投じた空軍医療兵ウィリアム・H・ピッツェンバーガーが銃弾を浴びて死亡した。それから33年後の1999年、ピッツェンバーガーの両親と戦友から名誉勲章の請願を受けた国防総省職員ハフマン(セバスチャン・スタン)は、退役軍人の証言を集めていく。

殉死した実在の米兵をめぐる実話の映画化だ。犠牲的な活躍で多くの仲間を救った兵士に、なぜ名誉勲章が与えられなかったのか。若きエリート官僚がその謎を探る過程を、回想シーンを織り交ぜて描いた。驚くべきは配役の豪華さで、戦友役のウィリアム・ハート、エド・ハリス、これが遺作となったクリストファー・プラマー、ピーター・フォンダらが重厚な演技を見せる。政治的なミステリー劇としての完成度はさほど高くないが、単なる英雄賛美映画ではない。無数のシワが刻まれた名優たちの顔とたたずまいに、生き残った者の深い苦悩、鎮魂の念が生々しくにじんでいる。トッド・ロビンソン監督。1時間56分。東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほかで公開中。(諭)

異論あり

良くも悪くもアメリカ的で、とりわけ戦争体験者やその家族の琴線に触れる。数十年を経ても残る「傷」の痛みを改めて実感させるハリス、フォンダらの深みのある表情が見応えにもなっている。ただ、ラストは盛り上げようとするほど既視感も強く、少々鼻白んでしまう。(鈴)

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