〝アジア最大級〟の第37回東京国際映画祭。国内外から新作、話題作が数多く上映され、多彩なゲストも来場。映画祭の話題をお届けします。
2024.11.03
日本アニメの未来はインディ系が開く 新進3監督が明かす製作秘話 東京国際映画祭
第37回東京国際映画祭のアニメ・シンポジウム「日本アニメの新世代」が1日、開催された。登壇した3監督は、いずれも新進インディペンデント系。日本のアニメのほとんどは原作ありきで物量を投入した商業アニメだが、3人は独自の資金集めや製作手法でオリジナルの世界を構築して劇場公開にこぎつけた。インディペンデントならではの自由と苦労を語り合った。
参加したのは「数分間のエールを」のぽぷりか、「クラユカバ」の塚原重義、「メイクアガール」の安田現象の3監督。短編映画やミュージックビデオを中心に活躍し、2024~25年に長編映画が劇場公開または公開予定だ。
YouTube、ニコ動がきっかけに
3監督とも、YouTubeやニコニコ動画など動画共有プラットフォームが足がかりとなった。高校生の時にニコニコ動画で配信されていたミュージックビデオにひかれたぽぷりか監督は、その後美大を受験し、自主製作を開始する。安田監督は、自らの小説やシナリオを多くの人に届けたいといった思いから、自身で培った3DCGのスキルと掛け合わせてショートアニメ製作をスタート。その後YouTubeにアップロードした「メイクラブ」がヒットし、「メイクアガール」へとつながった。また塚原監督も、YouTubeで自主製作アニメがブームだった10年前後、学生だった石田祐康監督らの短編アニメ「フミコの告白」(09年)に触発され、当時すでにアニメーションの仕事を始めていたが、自主製作を再開したという。
クラウドファンディングも、インディ系のクリエーターには味方となっているようだ。塚原監督は長編でなければ表現できないキャラクターのドラマを描きたいと考えて「クラユカバ」を企画した。製作会社などに持ち込むも断られる日々が続き、クラウドファンディングを実施。劇場公開されたのは構想から10年の月日がたってからである。
安田監督も「メイクアガール」の劇場公開にあたってクラウドファンディングを実施している。これまでのショートアニメはSNSで無料で公開しており、自身が作った作品に「お金を払う価値はあるのか」を直接見せつけられる怖さがあったと振り返っていた。
長尺、大人数 人に任せないと
長編になれば製作体制も大きく異なる。ぽぷりか監督が圧倒的に違うと感じたのは「尺の長さ」。60分の長編作品を作るには、3〜4分のミュージックビデオの作り方では通用せず、未知の領域であった。安田監督は「限られた予算と人数でスケジュールを守る特殊なワークフロー作りの方が苦労した」と話す。
関わる人数も増える。ぽぷりか監督は日ごろ3人の映像製作チーム「Hurray!」(ぽぷりか監督、おはじき副監督、まごつき・アートディレクター)で活動しているが、長編を作るにあたってメンバーを集めてもらった。人数が増えたことにより、「自分たちが作りたいものにどれだけ近づけることができるか」に悩んだという。安田監督はチームで製作したことにより、「ひとりの際は使わなかった脳みその筋肉が増えた」と話す。全部自分で担わず、チームのメンバーに任せることで無理のないペースで高いクオリティーのものを作ることができたという。塚原監督も「長編の物量は(自分が携わる分を)手放さないと回らない」と判断し、「任せるところは任せる」スタンスでいた。チームが慣れてくると、メンバーの得意な部分が見えてくるので任せやすくなった。Vコンテ作りや撮影、編集などを自分で押さえていれば、違った方向性に進むことはなかったと振り返った。
「今後、インディペンデント作品から長編作品製作の流れは増えるか」という質問に対し、3人とも「増える」と回答。昔と違い今は少人数でもアニメーションを作れるツールが増えているのに加え、SNSで誰でも簡単に発表することができる。またSNSの普及によって、「オリジナル作品を出したいプロデューサーには、出会いの場になっている」と安田監督は話していた。