誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2023.11.21
〈ネタバレ注意〉近未来に訪れそうな虚構世界94分の衝撃作! 高校生が見た「ドミノ」
主人公の刑事ロークは娘が誘拐されて精神を病んでいる。そんなさなかある連続強盗事件を追ううちに他人の脳を「声」や「アイコンタクト」でハッキングできる謎の男デルレーンに出会う。ロークは現場で発見した娘の写真で、彼が誘拐のキーパーソンであることを確信し対峙(たいじ)する。デルレーンは「Hypnotic」(原題であり、この映画のキーワード)というパワーの持ち主。世界を自らの手で支配しようとしていて、同じ能力を持つ者の組織の中でも危険人物とされていた。この組織は、さまざまな場面で、「他人の脳をハッキングする」という能力で世界経済、国際社会を支配しようとしていた。ロークはデルレーンが見せる力に惑わされずに娘との再会はかなうのか。
見ていた私は次から次へと訪れるどんでん返しに何が物語の現実か何が虚構か、混乱しつつも引き込まれていった。AIがどんどん進化し、私たち人間を追い越すとされる現代。「他人の脳をハッキングする」という想像がつかない近未来的本作品。これはいつかの現実かも、そう思いながら見ても面白い。
異なるタイトルが魅了する没入感
どこの描写で、もう自分はだまされているのか。ディテールを見ても難しく何度でも見たくなる中毒性のある映画だ。また原題では「Hypnotic」(催眠状態)だがなぜ邦題は「ドミノ」なのか。ぜひ推理しつつラストのシーンを見届けてほしい。
ドミノに隠された意味。愛娘「DOMINIQUE」と「ドミノプロジェクト」と称するプロジェクトの名前であり、「虚構世界」により現実がドミノ倒しのように倒れていく、崩れていくことも含んだ掛け言葉であるのだろう。娘が、ロークを自分の場所に導くために用意したドミノも!
家族愛からのラスト30秒のどんでん返し
実はこの話、刑事ロークと妻もその組織の一員だったのだ! 2人の子である娘は、Hypnoticの能力が著しく高かった。組織は、最強の能力者として娘を利用しようとする。2人は娘を組織から守ることを決心。ロークは、娘を隔離し、妻と自分の記憶を消す。記憶を戻せるようなヒントを自ら計画しちりばめていき、事あるごとに記憶を取り戻しつつ、ロークはデルレーンと組織と戦う。
私は、ゆがんだ形ではあるが「妻と自分の記憶を消してまで娘を命懸けで守る」ことに真の家族愛を感じた。娘を守るためには、親はどんな手段もいとわないという迫力を感じるストーリー展開。私は父を亡くしたばかりだが、父の愛は大きかった思い出がある。この話とは比べ物にならないスケールだが、父と一緒に乗っていたヨットで強風に見舞われ、命の危険を感じたことがあった。父は怖がり泣き叫ぶ私を落ち着かせ、必死で私を守ろうとした。その後も海の危なさを教えつつ楽しさも教えてくれた父。いつも私のことを最優先に生き方を教えてくれた父の愛は大きく、ロークの姿に重なった。
しかし! ここで終わらないのがこの映画の醍醐味(だいごみ)である。ラスト30秒。エンディング後にゆがんだ現実が登場。そこには死んだはずの・・・・・・! どんでん返しに次ぐ、衝撃の結末に度肝を抜かれる。
何かが暴走し、人が何かに操られる映画は怖くて苦手な部類だったが、そこだけにとどまらず、家族愛や二転三転するノンストップな展開、原題と邦題のタイトルが異なることでの意味深な暗示。ジャンルの垣根を越えたこの作品に魅了された圧巻の94分だった。
短いと思うだろうが全くそれを感じさせない物語の密度。エンドロールが始まって、圧倒されたままそこに座っていると、ハンマーで殴られるような衝撃がやってくるというとんでもない映画。一度では理解しにくいが、見終わった瞬間に「もう一度見ようか」と思わせる中毒性。最近見た映画で一番、力強く人に薦められる映画である。
最初は単純にベン・アフレックが好きで見たが、やはり見てよかった。彼は、出演映画を厳しく選ぶことで有名だが、やはり彼の選んだ映画だけあり、ぐいぐいとひきこまれた。きっと、みなさんもとりこになること間違いなしの作品です。
現在、公開中。