へんしんっ!  (C)2020 Tomoya Ishida

へんしんっ! (C)2020 Tomoya Ishida

2021.6.24

特選掘り出し!:へんしんっ! 模索しながら独創を体現

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

立教大大学院で学ぶ石田智哉監督は「しょうがい者の表現活動の可能性」を題材にドキュメンタリーを撮ろうと、演劇や舞踊に取り組む障害がある表現者を訪ねる。電動車椅子で生活し、映画という手段を模索する自らも被写体だ。

映画はなんだかもどかしい。活動現場を取材する一方で、石田監督は「対人関係で引いちゃって」と自信のなさを打ち明ける。作り手の迷いがそのまま映画に反映されて、外に向ける視点と内省する自我が混在し、ドキュメンタリーとしての腰が据わらないのだ。

一方で、そこが独創的でもある。映画の導き手となる同大特任教授のダンサー、砂連尾理(じゃれおおさむ)は、バレリーナも障害者も並外れた肉体という点では同様に面白いと、「障害」を表現の中で相対化する。「障害は個性」という使い古された言い回しが、舞踊公演に挑む石田監督の肉体を通じて実現されてゆく様は、生々しくスリリングだ。

作り手の身体性を含めて、石田監督にしか撮れない作品に違いなく、字幕と解説音声を標準装備とした「オープン上映」方式も含め、唯一無二の映画である。2020年のぴあフィルムフェスティバルグランプリ受賞作品。1時間34分。東京・ポレポレ東中野、大阪・第七芸術劇場ほか。(勝)