ひとしねま

2022.9.09

チャートの裏側:米原から加速する面白さ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

また、米映画で変な日本を見せられるのか。予告編に接した限り、かなり微妙な感じがあった。「ブレット・トレイン」だ。日本の高速列車内で、さまざまな思惑をもったワルたちが丁々発止を繰り広げる。最終の興行収入見込みは15億円が一つの目安か。まずまずだと思う。

高速列車は、東京発、品川、新横浜、静岡、某駅(浜松か)、名古屋、米原に停車し京都になだれこむ。列車名は「ひかり」ならぬ「ゆかり」という。本作では駅名が重要だ。内容とリンクしているからで、実のところ、名古屋まではかなり退屈し、米原からがぜん面白くなる。

面白さは、真田広之演じる日本人の元ヤクザが米原から乗り込むからだ。一触即発の列車内で、堂々たる態度と老賢人のような含蓄ある言葉で、くせ者たちを取り込んでいく。武士とヤクザが一体化したような役だが、変ではない。彼の登場から、ハチャメチャ感が加速する。

元ヤクザは、復讐(ふくしゅう)への強い思いをためこんでいる。それを映画自体が終盤の派手な描写の動力源にしているので、大仕掛けのハチャメチャ感の熱量が増す。リアリズム、関係ない。そのように見る作品だ。言い忘れたが、ブラッド・ピットが主演である。この俳優が、興行にどれほど貢献していることか。日本を舞台にした米映画、侮れない。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

ブレット・トレイン

殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、超高速列車の中でブリーフケースを奪うよう指令を受けた。東京駅で乗車して間もなくブリーフケースを手に入れたものの、品川駅で降りようとしたところで、すご腕の殺し屋ウルフに襲われた。車内には計10人もの殺し屋が乗り合わせ、血みどろのブリーフケース争奪戦が繰り広げられる。伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」が原作。
 
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