三島有紀子

三島有紀子

2022.4.27

力のあるコンテンツは観客に認めてもらえる 三島有紀子監督「Red」フランス公開によせて

国際交流基金が選んだ世界の映画7人の1人である洪氏。海外で日本映画の普及に精力的に活動している同氏に、「芸術性と商業性が調和した世界中の新しい日本映画」のために、日本の映画界が取り組むべき行動を提案してもらいます。

洪相鉉

洪相鉉

知略と創造性に満ちている

「私は文字通り、この映画に感銘を受けた(日本の女性監督が演出した。 日本ではこのことはアンダーラインを引くほど珍しいことである)。優雅で熱情的で献身的な … 情熱と感情の真の驚異、この作品の成就は知略と創造性に満ちている。 建築に対する隠喩が絶妙に使われているが、これはますます大きくなる内面の象徴でもある。 映画の崇高なポスターに魅了されていた私は、なにかを征服した時よりも多くのことを感じた。」
 
フランスの映画専門ウェブサイト《アロシネ》に誰かが書いた感想を、やっと読解ができる語学力で読みながら深く感銘を受けて、全文を翻訳してしまった。 現地での公開は3月9日だったので、まだ2週間もたっていない。評者の別のテキストを検索してみると、他の監督の作品に対する感想がいくつか書かれていたが、この作品のように丁寧で情熱的なものはなかった。 やはり自分の映画的な嗜好を満たす作品に出合い、非常に興奮していたのだ。 この映画のキャストやスタッフの一員ではない。 しかし、変に思われたとしても筆者はこの作品に多大な責任感を感じる。

全州国際映画祭で紹介

これは三島有紀子監督の「Red」の話だ。 筆者はこの作品を発掘し、アドバイザーを務める全州国際映画祭で紹介した。 映画祭のセレクションは、単に招待と上映のためではなく、一本一本の作品が非常に特別である。 毎年世界各地で100以上開催されている国際映画祭は、映画芸術コンクールという特性以外にも、フィルムマーケットとしての役割を果たし、映画人の交流とそれに伴う国際共同製作の機会などを提供している。 しかし、筆者なりの多様なポジションで国際映画祭を手掛けた結果、やはり核心的な機能は斬新なクリエーターの発掘と育成である。 1990年代後半から韓国で次々と創設された釜山国際映画祭や、筆者がかかわる富川国際ファンタスティック映画祭、そして全州国際映画祭は国際舞台への進出を夢見るアジア映画人の登竜門となってきた。 特に「日本映画」という専門分野を担当している筆者としては、厳しい業界の環境に屈せずに奮闘している映画人の作品を一本でも多く海外の観客や業界関係者に紹介できる機会であるという点で、ただの仕事以上に意味がある。

また、三島監督と全州国際映画祭との縁は深い。河瀬直美や西川美和などとともに日本映画界の代表的な女性監督の一人である彼女は、全州国際映画祭を通じて世界進出の基盤を築いた。 初回招待作「繕い裁つ人」は全州国際映画祭を経て上海国際映画祭へ、「幼な子われらに生まれ」は全州国際映画祭を経てモントリオール世界映画祭で審査員特別賞の名誉を獲得した。

しかし、3回目の招待作「Red」で「ザ・ライダー」のクロエㆍジャオと同じ部門に招待され、シネフィルの関心を集めていた彼女は、2020年の全州には来られなかった。 その年の3月、世界を衝撃に陥れたコロナ禍により海外ゲストの招待は取り消され、オンライン中心の無観客映画祭に転換してしまったからだ。

韓国公開、そしてフランス公開へ

それだけではない。 世界保健機関(WHO)のパンデミック宣言での映画館の上映が不可能となった極めて悲しい事態を挽回するため、同年秋にソウルで開催されたスペシャルプログラム「Falling In Jeonju」の一環として、遠隔のゲストトークと共に「Red」が明洞のシネマコンで上映される予定だった。しかし、政府主導のソーシャルディスタンシングの強化に伴い、前日にイベント全体が中止となる悲劇にも見舞われた。 ただ慰めになったのは、映画祭のオンライン開催期間に合わせて筆者が発行した妻夫木聡のインタビューが業界の話題となり、NETFLIXでの配信とは別に韓国内最大の日本映画バイヤーが韓国公開を決めてくれたことである。 筆者が補佐役を務めていた全州国際映画祭の閔盛郁(ミンㆍソンウク)副委員長が大変慰めになる言葉をかけてくれたのは、まさにその時だった。

「あまり心を痛めるな。 力のあるコンテンツは観客に認めてもらえるよ。」

全州国際映画祭への招待から1年後に韓国で公開され、その1年後に聞こえてきたフランスでの朗報は、このような事情があってこそもっと特別で涙ぐましい。 二年ぶりに日本の家に帰ってきた今、自己隔離期間の中でも日本映画セレクションのプログラミングのためにリモートミーティングを続けた。 韓国でのオミクロンの状況を見ると、WITHコロナの象徴的イベントとして企画していた海外ゲスト招請の実現の可能性に暗雲が垂れ込めている。 だが、絶望するのはまだ早い。 私は依然としてイベントに頼らずとも観客に伝わる「コンテンツの力」を信じている。

ライター
洪相鉉

洪相鉉

ほん・さんひょん 韓国映画専門ウェブメディア「CoAR」運営委員。全州国際映画祭ㆍ富川国際ファンタスティック映画祭アドバイザー、高崎映画祭シニアプロデューサー。TBS主催DigCon6 Asia審査員。政治学と映像芸術学の修士学位を持ち、東京大留学。パリ経済学校と共同プロジェクトを行った清水研究室所属。「CoAR」で連載中の日本映画人インタビューは韓国トップクラスの人気を誇る。

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