みしま ゆきこ
1969年4月21日 生まれ
映画監督「Red」(2020)「ビブリア古書堂の事件手帖」(2018)「幼な子われらに生まれ」(2017)「少女」(2016)「破れたハートを売り物に」(2015)「繕い裁つ人」(2014)
「 カラオケ行こ! 」 (山下敦弘監督) 「一月の声に歓びを刻め」 (三島有紀子監督) 「マッチング」 (内田英治監督) 「辰巳」 (小路紘史監督) 「違国日記」 (瀬田なつき監督) まだ半分、楽しい悲鳴 疑問に思う。配信の成長に反比例する劇場の衰退、製作本数の減少などに象徴される世界映画界の危機の中、日本映画界は「無風地帯」なのか。もちろん違うだろう。しかし、海外映画祭をにぎわせた傑作の多くがラインアップされていた今年の前半は、その 盛り上がりに負けず、多くの作品が筆者を興奮させている。 公開順で見れば、数行のストーリーラインでも観客を魅了する...
洪相鉉
2024.7.08
「No, the pleasure is mine! (いや、うれしいのは私の方だよ!)」 彼がにっこりと ほほ笑み ながら握手を求めてきた。思わず「やった!」と声 を 上げたくなる気持ちを落ち着かせ、彼の手を握った筆者。とても優しい顔をした白人の中年男性 は 、筆者の肩を軽くたたきながら話を続けた。 「May you can make today's story into a film later. With a title like “A Long Drive Cowboy”. (今日の話が映画化されますように。タイトルは『A Long Drive Cowboy』だね)」 ...
2024.4.23
「一月の声に歓びを刻め」は、三島有紀子監督が幼少期の性被害を基にして作った映画だ。「いつかは映画に」と思い続けた原点と、コロナ禍を経て向き合った。しかし、描いたのは私的体験というより、それを掘り下げて突き当たった「人間の罪のありよう」だ。「自分にとって大きな作品になった」と話す。 6歳で受けた性暴力 「赤い靴」が生きる力に 6歳の時に性暴力の犠牲となり、「自分を消したい」というほど深い傷を受けた。しかし4歳で見た「赤い靴」(1948年)の美しさへの感動を思い出し、最後に命を絶つ主人公に対して「自分はまだ生きている」と考えて楽になったと振り返る。事件のことは「映画作家としていつか...
勝田友巳
2024.2.14
場所も登場人物も異なる三つの話を、4章仕立てで構成する。しかし三つを一つにしたというよりも、一つの物語を3様に変奏した趣だ。三島有紀子監督による「Red」(2020年)以来の長編劇映画。これまで以上に強い個性を放ち、監督自身の覚悟と叫びが聞こえてくるような力作である。 北海道・洞爺湖畔に住むマキ(カルーセル麻紀)が、年始に来た娘美砂子(片岡礼子)の一家を迎える。性適合手術を受けて女性として生きるマキは、47年前に死んだ次女れいこのことで苦しんでいる。東京・八丈島で牛を飼う誠(哀川翔)の元に、娘の海(松本妃代)が5年ぶりに帰省した。誠は交通事故に遭った妻の延命治療を中止したことを今も自問する。...
2024.2.09
3人の声が耳から離れない。カルーセル麻紀、哀川翔、前田敦子それぞれの特徴的な声にのった生々しいせりふが、ぐわんぐわんと頭を巡る。最も印象的だったのは回想シーン。俳優の声と立ち回りで構成された場面の演出は舞台のようでもあり、細かな映像で見るよりもはるかに身体に力が入った。それに応える俳優陣の演技にも圧倒され、くぎ付けになりながらも目を背けたくなるという不思議な感覚を初めて味わった。 三島有紀子監督の長編10本目となる「一月の声に歓びを刻め」。監督自身が幼少期に受けた性暴力事件を基に、3人の人生と三つの島、それぞれが抱える罪の意識や過去との向き合い方を描きながら、交わるはずのない物語が...
波多野菜央
2024.2.05
新型コロナウイルス感染流行で、最初の緊急事態宣言が出された2020年4月、何を感じ何をしていたか。「東京組曲2020」は三島有紀子監督が企画、監修し、20人の役者たちとフィクションも交えて「その時の思い」を記録した作品だ。三島監督は、コロナ禍が次第に過去になっていく中で「今、見るべき映画になった」と語る。 世界中の人の背中をさすってあげたい 20年4月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が出され、同16日に対象が全国に拡大した。三島監督は自身の誕生日である同22日未明、眠れずにベランダで小説を読んだり、脚本のプロットを書いたりしていた。真っ...
鈴木隆
2023.6.18
CGV全州高士(チョンジュㆍコサ。韓国にある映画館)8館、2023年5月2日21時36分より「東京組曲2020」の上映後のゲストトーク。 同作は全州国際映画祭(以下、「JIFF」)東アジア映画特別展に、日本を代表する作品の1本として出品された。そもそも作品を紹介したのは筆者だが、東アジア映画特別展自体にも深い意味がある。2012年5月の日中韓文化相会議で合意されて以来、2014年から3カ国で文化的伝統を代表する都市を選定し、毎年3都市を行き来しながら文化交流イベントを開催する国際交流プロジェクトの一環だったからだ。 今年の文化都市は日本の静岡県と韓国の全州市、そして中国の成都ㆍ梅州市。日...
2023.5.29
新型コロナウイルス感染拡大で最初の緊急事態宣言が出された直後、2020年4月22日の三島有紀子監督の体験が発想の起点となった短編集。三島監督の呼びかけで、20人の役者たちがコロナ禍の出来事と思いを自ら撮影、三島監督が監修してまとめた。経験したことのない災厄に仕事を奪われ、戸惑いの中で何を感じたか。映像として記録に残したいという思いから製作された。 出演予定作品の撮影が中止になり、将来への見通しが砕かれた人、目に見えぬウイルスにおびえ、家族との接触を断絶する人。えたいの知れないものへの恐怖と反応を記録した。ドキュメンタリーと銘打っているが、三島監督が演出を提案したケースもあったという。組織への...
2023.5.12
毎日新聞の映画サイト「ひとシネマ」初のオンラインイベントが、5月27日(金)、約2時間半にわたって開催された。第1部では、「Z世代の『映画の推し事』」と題して、ひとシネマでライターをしているZ世代の2人が現代の映画との付き合い方について語り合い、第2部では映画監督の三島有紀子が「日本映画の世界への可能性」について、作り手側からの見解を述べた。 映画は「社会問題」や「まだ見ぬ世界」との懸け橋 第1部「Z世代の『映画の推し事』」に登場したのは、大学で映像身体学を勉強しているガールズユニット「Merci Merci」の青山波月(あおやま・なつ)と、東京2020パラリンピック開会式で片翼の小さ...
及川静
2022.6.24
映画祭取材などの機会に海外で日本映画を見ると、一緒に見ている観客の反応に戸惑うことがある。特に笑い。「ここで?」という場面で会場が沸いて取り残されることもあれば、「ここでしょ!」というところなのに笑っているのは私だけということも。字幕のせいもあろうが、そもそも文化的にツボが違うのかもしれない。 5月に参加したオンラインイベントでも、三島有紀子監督が反応の違いを話してくれた。毎日新聞社が運営する映画サイト「ひとシネマ」の企画で、三島監督らを招いて日本映画の海外展開について話を聞いたのだ。 「韓国のお客さんは、説明的なセリフが終わると身を乗り出す。日本では説明的なセリフの時にグッと集中する」。...
2022.6.06
毎日新聞創刊150年を記念してつくられた映画総合サイト「ひとシネマ」の開設記念のオンライントークイベント(毎日文化センター大阪共催、コカ・コーラボトラーズ協賛)が27日午後7時から、2部形式で開かれる。映画監督やひとシネマの執筆陣が映画について語り合い、日本映画やひとシネマの可能性を探る。参加無料。 勝田友巳編集長のあいさつの後、ひとシネマライターの青山波月さんと和合由依さんが語る第1部は「Z世代の映画の推(お)し事(ごと)」がテーマ。第2部では大阪府出身の映画監督、三島有紀子さんと副編集長・SYOさんが「日本映画の世界への可能性」をテーマに話す。 三島監督は監督作「幼な子われらに生ま...
ひとシネマ編集部
2022.5.25
5月27日、オンラインイベントを開催! 「ひとシネマ」オープンを記念して、5月27日、初めてのオンラインイベントを2部形式で行います。 創刊の挨拶と総合司会は同編集長の勝田友巳。 続いて第1部はひとシネマライターの青山波月さん、和合由依さんを迎えて「Z世代の映画の推し事」を語ります。青山さんはアイドルグループ Merci Merci に所属。大学で映画を学んでいます。和合由依さんは東京パラリンピック開会式で「片翼の小さな飛行機」を演じ、世界中に感動を与えました。現在は都内の中学3年生。進行はひとシネマ総合プロデューサー宮脇祐介がつとめます。 第2部は現在、監督...
2022.4.28
トラウマを描いた三つの物語。北海道・洞爺湖のほとりに住むトランスジェンダーのマキは、6歳で死んだ次女を忘れられずにいる。訪ねてきた長女との間にも葛藤を抱えていた。八丈島で牛飼いを営む誠は、妻の延命治療を止めた罪の意識に苦しんでいる。5年ぶりに再会した娘は、妊娠しているが、誠はそのことを聞けずにいる。大阪・堂島では、れいこが元恋人の葬儀に駆けつける。れいこは幼い頃に性暴力被害を受けていて、事件の現場でその記憶と向き合うことになる。 「幼な子われらに生まれ」などの三島有紀子監督が、自身が被害者となった幼少期の性暴力事件を基に構想した。コロナ禍で自身の企画が相次いで中止となる中で過去と向き合い、自...
コロナ禍での、三島有紀子監督の体験が発想の起点となった短編集。コロナ禍で仕事を失った役者たちに、感じたことを映像の記録として残したいと呼びかけ、これに応じた20人がそれぞれの身に起きた出来事をフィクションを交えて撮影。三島監督が監修、編集した。 ©️「東京組曲2020」フィルムパートナーズ
湖のほとりのパンカフェ。 東京から北海道に移り住み、湖が見渡せる丘の上でパンカフェ「マーニ」を始めた夫婦。水縞くんがパンを焼き、りえさんがそれに合うコーヒーを淹れ、料理をつくる。そこには、日々いろんなお客さまがやってくる。それぞれの季節にさまざまな想いを抱いて店を訪れた彼らが見つけた、心の中の“しあわせ”とは? そして彼らを見守るりえさんと水縞くんに訪れることとは?
重松清原作の映画化。中年サラリーマン田中信(浅野忠信)は2人の子持ちの女性奈苗(田中麗奈)と再婚した。奈苗の妊娠により、長女の薫(南沙良)は本当の父・沢田(宮藤官九郎)に会いたいと言い出す。DVで別れた沢田と合わせたくない2人と、娘の間には深い溝が出来ていく。
神戸の坂の上の洋裁店の店主・南市江(中谷美紀)は頑固一徹の昔気質の洋裁職人。先代が残した洋服のお直しと、先代がデザインした一点物の新作を作るだけ。南洋服店の服は、世界で一着だけの一生物だった。デパートにつとめる藤井(三浦貴大)はその質の良さを多く人に知ってもらいたいとブランド化を勧めるが見向きもしない。そんな藤井の、自分がデザインしたドレスを作りたいはずだと言われ、心に秘めていた気持ちが動きだす。
エリートサラリーマンの夫・村上真(間宮祥太郎)、一人娘、夫の両親と何不自由のない生活を送る塔子(夏帆)。経時的には何一つ申し分の無い生活を送っていたが、何か満たされない気持ちを持っていた。元恋人・鞍田明彦(妻夫木聡)との再会で再び関係を持つことによって塔子の人生は変わっていく。島本理生原作小説の映画化。