なん・なんだ  (C)なん・なんだ製作運動体

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2022.1.13

特選掘り出し!:なん・なんだ 人生後半戦、パワフルに

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

初老の男女の三角関係の話だが、「いい年して」「枯れて」とは正反対。脂っこくて、色気もあり、少年少女のような真っすぐさや恥じらいも見せる。酸いも甘いも知り尽くしても、どうにもできないエネルギッシュな恋物語だ。

三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)はまもなく結婚40年の熟年夫婦。ある日、美智子が交通事故に遭い、意識が戻らない。美智子のカメラには見知らぬ男(佐野和宏)が写っていた。三郎は娘知美(和田光沙)とともに、妻の浮気相手を捜し始める。

浮気が発覚しても、3人のうだうだ、だらだら感は止まらない。すっきりしたらと思ってしまうが、長年積み重ねてきた関係性をそうそう変えることはできない。あまり見たくない姿、と言ってしまえばそれまでだが、大抵の人はそんなもの。怒ったりあきれたりしても、受け入れて生きるしかない。人生のやるせなさと諦観を下元、烏丸、佐野の3人が全身で体現。一方、不倫中の娘は母の気持ちは分かるし生きざまを否定はしないが、自分は違うと一線を引く。人生後半戦でもすり切れるまでパワフルに生きる姿を映した。山嵜晋平監督。1時間47分。15日から東京・新宿K’scinema、28日から京都・京都シネマ。(鈴)