ウシュヴィッツ・レポート  ©D.N.A., s.r.o., Evolution Films, s.r.o., Ostlicht Filmproduktion GmbH, Rozhlas a televízia Slovenska, Česká televize 2021

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2021.7.29

アウシュヴィッツ・レポート

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

第二次大戦中、アウシュビッツ収容所で、2人のスロバキア系ユダヤ人が脱走し、収容所でのユダヤ人虐殺の実態を連合国軍に報告した。その結果、12万人以上のハンガリー系ユダヤ人が収容所への強制移送を免れた。この実話を、スロバキアのペテル・ベブヤク監督が映画化した。

前半、脱走して捕らえられたユダヤ人が絞首刑にされるイメージ場面や、主人公の2人が脱走した後、同じ監房のユダヤ人たちが寒空の下、何日間も立たされる拷問シーンはリアリティーがあり、胸をつく。ナチスの将校の内面もしっかり描いている。主人公の脱走劇もスリリングで、ハラハラしながら見守った。ナチスによる惨劇の記憶をとどめている国が作る収容所の描写はさすがに一級品だ。

それだけに、2人が脱走して救助された後の展開はやや説明的で、前半との隔たりを感じてしまった。それでも、収容所の実態と勇気あるユダヤ人の行為を伝える内容には十分なインパクトがある。1時間34分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(光)

 ここに注目

 エンドロールで流れるトランプ前アメリカ大統領ら現代の政治家らの言葉が痛烈で、恐怖をあおる。アウシュビッツで起きたことを、過去の歴史とだけ捉えるのではなく、今の時代にもつながる視点で見るべきだというベブヤク監督たちの思いがリアルに伝わってくる。(鈴)

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