ゾッキ  © 2020「ゾッキ」製作委員会

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2021.4.01

ゾッキ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

漫画家大橋裕之の作品を連作短編集のようにまとめて実写映画化。竹中直人、山田孝之、斉藤工のクリエーティブな俳優3人が共同監督した。

ママチャリで「あてがないというアテを頼りに」南に向かう男(松田龍平)が人のいい漁師たちの世話になる話。存在しない自分の姉に関心を持ったクラスメートにうそをつき続けて親しくなる高校生、父(竹原ピストル)が通っていた高校に一緒に忍び込んだ少年が体験した不思議な思い出など、うそと秘密をベースにした小編が時に重なり合って描かれる。

とぼけた笑いとペーソス、切なさと懐かしさが波状攻撃のように押し寄せて、心地よい感覚が絶えない113分。どれももう少し後が見たいというところで別の話に移り、後ろ髪を引かれるが、その繰り返し。1本の長編にしても成り立ちそうだが、エッセンスを凝縮して輝きを増した。人って笑っちゃうし、シュールで面白い、とちょっとトクした人間観察に浸れる映画体験。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・イオンシネマシアタス心斎橋ほか。(鈴)

異論あり

見た後で「良かったぁ」という感激ではなく、「変わったものを見たなぁ」と首をひねる。意味やつじつまを求めるべからず。3人の監督が、映画らしさから競って遠ざかろうとしている風情だ。ゆったり安心して映画の醍醐味(だいごみ)を味わいたいという、正調映画ファンには不向きかも。(勝)

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