毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.11.25
「パーフェクト・ケア」
マーラ(ロザムンド・パイク)は、判断力が衰えた高齢者から合法的に資産を奪う悪徳後見人。愛するパートナー(エイザ・ゴンザレス)とともに資産家の女性(ダイアン・ウィースト)を新たなターゲットにするが、ミッション遂行を目前にロシアンマフィア(ピーター・ディンクレイジ)の激しい妨害に遭う。
先読みできない展開もさることながら、この映画の面白さを支えているのはマーラの強烈なキャラクター。命が奪われそうになっても絶対に屈しない野心あふれるヒロイン像が、とても痛快だ。モラルに反する開き直った彼女の行動は、ブラックコメディー的な笑いを巻き起こす。パイクはゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディー部門)受賞も納得の振り切れた演技を披露。正義などないように見える世界で、悪と悪のぶつかり合いはどこに向かっていくのか。エンディングまで背徳的な楽しみを味わわせてくれる。1時間58分。J・ブレイクソン監督。東京・新宿ピカデリー、大阪・なんばパークスシネマほかで12月3日公開。配信も開始。(細)
ここに注目
高齢化社会とビジネスの闇を突くという意気込みはなく、傑作とまではいかないまでも今風で刺激的。おっかないマフィアのボスを演じたディンクレイジも、パイクを向こうに回した怪演で映画を締める。味のある俳優が並んでいて、層の厚さに感心した。(勝)