「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」

「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」©Story of Film Ltd 2020

2022.6.09

特選掘り出し!:「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」 革新の軌跡、縦横無尽に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「ストーリー・オブ・フィルム」(2011年)というテレビシリーズをご存じだろうか。映画の歴史120年を新たな視点で捉え直した同作品は、全15章、本編合計900分以上におよぶ壮大なドキュメンタリー。本作はその最新版にして、初の劇場版だ。

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今回の対象は10年から21年にかけて世界中で作られた〝革新的〟な映画だ。誰もが知る大ヒット作から、日本未公開のアジアやアフリカの映画までを網羅。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のアクション描写や「イット・フォローズ」の恐怖演出の斬新さ、スローシネマと呼ばれるアート映画の特異な魅力などを、実際の場面を引用して解説する。

監督を務めた英国人作家マーク・カズンズは博覧強記のシネフィル。彼の独自の批評眼に基づくセレクション、製作国やジャンルの垣根を縦横無尽に越える編集のセンスが素晴らしい。配信映画の普及、新型コロナウイルス禍という近年の重要トピックも取り込み、現代の映画がいかに変容し、多様性に富んでいるかを示す2時間47分の労作。映画好きなら、この夢のような旅にずっと浸っていたいと思わせるシネ・エッセーである。東京・新宿シネマカリテ、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(諭)

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