©2020『あの頃。』製作委員会

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2021.2.18

あの頃。

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

バイトもバンド活動もうまくいかず、鬱々とした日々を過ごす劔(つるぎ)(松坂桃李)。友人から手渡されたDVDでアイドル、松浦亜弥のミュージックビデオを見て魅了され「ハロー!プロジェクト」にのめり込んでいく。そこではコズミン(仲野太賀)をはじめ、同じように〝ハロプロ〟を愛する仲間たちとの出会いがあった。漫画家、ベーシストとして活躍する劔樹人の自伝的コミックエッセーを映画化。

不意に「推し」と出会って視界が開く瞬間の高揚感と、のめり込んでいく猛烈なスピード感。仲間との意味などないかもしれないがかけがえのない時間を、劔たちの会話の楽しさや情けなさの積み重ねで描き出した。アイドルオタクの活動や、2000年代初頭のインターネットの描写もこだわりが感じられる。界隈(かいわい)が違っても推しがいる人、誰かを推したことがある人の心に刺さる大人の青春映画だ。監督は「愛がなんだ」などで一方通行の思いを描いた恋愛映画の名手、今泉力哉。1時間57分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

好きなアイドルを推しと呼び「モーニング娘。」などのアイドルグループを擁する集団がハロプロ。なんてことを知らなくても「大のオトナが……」と眉をひそめても、劔らの情熱と充実感には共感必至。そして仲間の死も明るく迎えようとする姿にはホロリ。あなどるべからず。(勝)