「エンドロールのつづき」 ALL RIGHTS RESERVED©2022. CHHELLO SHOW LLPl.

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2023.1.27

特選掘り出し!:「エンドロールのつづき」 手作り映写機に歴史重ね

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画愛にあふれた作品は、見ていて気持ちがいい。このインド映画でも、貧しい少年が映画に魅せられる。多くの映画愛映画の主人公はカメラを手にして撮ろうとするが、この作品は上映に向かうところがユニークだ。

9歳のサマイは、チャイ売りの父親を手伝うやんちゃな少年だ。普段は厳しい父親が、一度だけ連れて行ってくれた映画に感激。ある日潜り込んだ映画館で、映写技師のファザルと出会った。母親が作った弁当と引き換えに映写室で見る取引が成立して入り浸り、やがてフィルムを持ち出して仲間と「上映会」を開く。

はじめはフィルムの一コマに光を当てて壁に映し出し、やがて映像を動かす仕掛けを考えるようになる。ガラクタで手作りの映写機をこしらえようと奮闘する姿に、幻灯から始まった映画の歴史を重ねる。写真が大写しになる喜び、それが動き出すワクワク感。原初的な映画の魅力と映画館の興奮を呼び起こす。歴史はデジタル化まで及び、フィルムの行く末も示す。

映画は世界の共通言語と、改めて実感。サマイの母親の作る料理と、古今の映画人へのオマージュも、お見逃しなく。1時間52分。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(勝)