ローズメイカー 奇跡のバラ

ローズメイカー 奇跡のバラ

2021.6.03

ローズメイカー 奇跡のバラ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

かつては数々の新種のバラを開発していたエヴ(カトリーヌ・フロ)。しかし今では大企業に顧客を奪われ、父親から譲り受けたバラ園も倒産寸前の危機に見舞われていた。助手のヴェラ(オリヴィア・コート)がバラ園再生のために雇ったのは、職業訓練所に通っていたフレッド(メラン・オメルタ)ら3人のはみ出し者たち。寄せ集めのスタッフがトライと失敗を繰り返しながら、起死回生を目指す。

現代社会から押し出されてしまった弱者に寄り添う視線は優しく、バラ栽培の裏側を描く仕事映画としての面白さも。色とりどりのバラが咲き誇る映像には、思わず深呼吸をしたくなるような美しさがある。頑固なエヴが仲間と家族のような関係を作っていく展開に意外性はないが、バラと人を育てた先に訪れるラストには、爽やかな感動が待っている。自立した役柄が似合うフランスの名女優、フロの自然な芝居とユーモアのさじ加減のおかげだろう。ピエール・ピノー監督。1時間36分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

異論あり

定型通りバランス良く整えられた職人的作り。ウエルメードで安心して見ていられるものの、芸術的挑戦とか社会的テーマといった野心や下心はないから、それ以上でも以下でもない。バラ栽培の奥深さがアクセントになっていて、愛好家には違った楽しみ方があるかも。(勝)