「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」

「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」©︎2018 Pandora Film Produktion GmbH, Kineo Filmproduktion, Pandora Film GmbH & Co. Filmproduktions- und Vertriebs KG, Rundfunk Berlin Brandenburg

2021.5.13

「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1998年に43歳の若さで死去した東ドイツ出身のミュージシャン、ゲアハルト・グンダーマン(アレクサンダー・シェーア)に光を当てた人間ドラマ。炭鉱で働きながら人生の夢や理想を歌ったグンダーマンは、〝東ドイツのボブ・ディラン〟と呼ばれるほど人気を博したが、彼はシュタージ(国家保安省)のスパイでもあった。東西ドイツ統一を挟む二つの時制を行き来し、その実像に迫る。

ある時は激情家のトラブルメーカー、またある時は不器用なロマンチスト。いくつもの表情をのぞかせるグンダーマンとは何者なのか。なぜ彼はスパイになったのか。アンドレアス・ドレーゼン監督は、答えをかみ砕いて描こうとせず、この奇妙なカリスマ性を放つ人物の複雑さを丸ごと観客に提示する。音楽映画としても魅力的で、メランコリックな詩情をたたえている。とりわけグンダーマンが荒野のごとき採掘場で巨大重機を運転する情景が、しばし忘れられない。2時間8分。東京・渋谷ユーロスペース(15日から)、大阪・シネ・ヌーヴォ(29日から)ほか。(諭)

異論あり

聴き入ってしまうグンダーマンの歌声と巨大採掘場の風景は圧倒的で、社会主義国の体制を象徴するようだ。しかしドキュメンタリー的な要素は希薄で、グンダーマンを知らず、事の次第も分からないと、物語は隔靴搔痒(かっかそうよう)。もうちょっと説明してくれると、ありがたかった。(勝)

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