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2023.11.23
日本へのリスペクトも感じさせるゴジラシリーズの最新ドラマ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」:オンラインの森
現在、東宝ゴジラの最新作「ゴジラ-1.0」が公開されて話題を呼んでいるが、一時は途切れてしまっていたゴジラシリーズを再開させたのは、レジェンダリー・ピクチャーズによる2014年のハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」だった。
レジェンダリーはゴジラとキングコングをクロスオーバーさせた「モンスター・ヴァース」を始動させ、ラドン、モスラ、キングギドラといった人気怪獣も参戦する一大フランチャイズへと発展。来年には第5作となる「Godzilla x Kong: The New Empire」(原題)が公開される予定だ。
さらに劇中に登場する怪獣対策組織「モナーク」にスポットをあてたドラマシリーズがスタート。11月17日からAppleTV+で配信が始まった「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」である。
※3話までの内容に触れています。
映像提供:Apple TV+
「GODZILLA ゴジラ」などとリンクする形で物語が進行
全10エピソードからなり、大きくわけて二つのストーリーが進行する。ひとつ目はモナークの創設に関わった科学者カップルと護衛任務を帯びた米兵の物語。そしてふたつ目は、「GODZILLA ゴジラ」のクライマックスでゴジラが大暴れしたサンフランシスコの大惨事を生き延びた主人公ケイト(アンナ・サワイ)が、死んだ父親が隠していた秘密を追うミステリーになっている。
ふたつのエピソードは、やがて3世代の物語であることがわかってくる。ケイトの父親はモナーク創設に関わった科学者カップルの息子であり、またカップルのひとりは「キングコング:髑髏島の巨神」でジョン・グッドマンが演じた科学者の若き日であることが判明する(ジョン・グッドマンもエピソード1の冒頭でちらりと顔を出している)。
現時点で3話までしか見られていないため、後半どこまで盛り上がっていくのか想像がついていないのだが、素直に感心するのは、毎エピソードに必ず怪獣がらみの見せ場が用意されていること。マーベルでもスター・ウォーズでも、劇場映画から始まったフランチャイズから派生したドラマシリーズは、さすがに映画よりスケール感がこぢんまりするものだが、少なくとも「モナーク」は怪獣を出し惜しみしたりせず、モンスター・ヴァースの名にふさわしいスケール感をキープしながら進んでいく。
スケール感があり怪獣たちも大暴れ。完結まで楽しませてくれそうだ
そしてもうひとつは、世界の視聴者の多くには関係ないことかもしれないが、きちんと日本ロケを行っていること。室内のシーンになるとスタジオのセットになり、インテリアに少々違和感を覚えたりはするものの、ゴジラ災害によって緊急事態が発令されたままになっている「GODZILLA ゴジラ」以降の日本の姿が、主に新宿の実景を使って表現されているのである。
「GODZILLA ゴジラ」のギャレス・エドワーズ監督に限らず、ゴジラシリーズに関わる監督やクリエーターは筋金入りのゴジラファン、怪獣ファンばかりで、日本にもリスペクトの心を持っている。
「モナーク」でも日本が重要な舞台になっており、主人公ケイトも含めてメインキャラクターに日本人は多い。だからこそ、きちんと日本ロケを敢行することで違和感を最小限にとどめていることは、当然といえば当然とはいえ、どこかホッとさせられるものがある。
「モナーク」のシーズン1が「GODZILLA ゴジラ」と続編「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の間を埋める役割を果たすのか、さらなる過去と未来を包括するシリーズになっていくのかは未知数だが、とりあえずいろんな怪獣が暴れてくれるし、映画版のシーンが突然割り込んでくるサービスショットも盛り上がる。
カート・ラッセルと息子のワイアット・ラッセルが同じキャラクターの現在と過去の姿を演じているのも興味深く、まだ名前だけしか登場していない渡辺謙が演じた芹沢博士のカメオ出演だってありえるかもしれない。シーズン1が完結する新年1月12日まで、退屈とは縁遠いまま楽しませてくれそうだ。
「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」はApple TV+にて独占配信中
2024年1月12日まで毎週金曜日新エピソード配信。