「最後の決闘裁判 」

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2021.10.14

「最後の決闘裁判」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

14世紀末のフランス。騎士ジャン(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)は、夫の旧友ジャック(アダム・ドライバー)にレイプされたと訴える。しかし、ジャックは無実を主張。真実の行方は男同士の決闘に委ねられる。敗者は死罪、夫が負ければマルグリットも偽証罪で火あぶりという命がけの闘いが始まる。
神は正義の者に勝利を与えるとする神明裁判が行われていた中世の実話に基づき、出世を巡るジャンとジャックの確執、密室で起きた事件のあらましを3人それぞれの視点で描く。同じ出来事を映し出していても、それぞれの思惑によって受け止め方がまったく違うことに驚かされる。

「合意があった」と強弁するジャックや、マルグリットに侮辱的な質問をぶつける裁判官たちからは女性に対する敬意が全く感じられない。それが当たり前だった時代、性被害を訴え出たマルグリットの勇気に心を打たれた。リドリー・スコット監督。2時間33分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(倉)

異論あり

ずばり「グラディエーター」ミーツ「羅生門」。複数の視点によるミステリー調の構成は細部の差異を表現するにとどまり、大きな驚きを生むには至らない。しかしクライマックスのスペクタクルは、剣と甲冑(かっちゅう)がきしむ金属音からして激烈。中世の決闘の野蛮さをまざまざと感じた。(諭)

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