「愛の不時着」より 

「愛の不時着」より 

2024.5.09

必見! 「涙の女王」が更新するまでのtvN視聴率トップ3作品、「愛の不時着」などをご紹介!:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

梅山富美子

梅山富美子

話題の韓国ドラマ「涙の女王」(Netflixで独占配信中)が、韓国のケーブルテレビ局tvNのドラマで最高視聴率1位を記録した。放送直後に動画配信サービスで視聴できる環境のなか、この高視聴率は並大抵のことではなく、tvNが最高視聴率を更新するのは約4年ぶりとなった。
 
tvNとは、韓国の企業CJグループのエンタメに特化した会社CJ ENMが運営するケーブルテレビ局で、2006年に開局。数々の名ドラマを生み出し、近年も「哲仁王后(チョルインワンフ)~俺がクイーン!?~」(20年)、「ヴィンチェンツォ」(21年)、「シュルプ」(22年)、「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」(23年)と高視聴率を獲得した作品をコンスタントに生み出している。
 
ここでは、「涙の女王」が上回るまで、4年間tvNの歴代最高視聴率だったトップ3の作品を紹介する。

「愛の不時着」より

「愛の不時着」(19~20年)最高視聴率21.7%

tvNのこれまでの最高視聴率は、日本でも旋風を巻き起こした「愛の不時着」(Netflixで独占配信中)の21.7%だった。Netflixで日本の非英語・テレビ部門のトップ10に長期にわたり君臨し、ミュージカル化されるなど、ドラマだけにとどまらず社会現象となった作品だ。
 
本作は、パラグライダーで北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢ユン・セリ(ソン・イェジン)と、北朝鮮の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)がひかれ合う物語。軍の陰謀や家族の問題、軍事境界線という大きな壁が立ちはだかり、2人の許されぬ恋はいやが上でもヒートアップする。
 
少し高飛車なセリと堅物なジョンヒョクが徐々に距離を縮めていく様子は悶絶(もんぜつ)するほど胸キュンの連続で、ジョンヒョクがセリの危機を守り、時に涙を流す姿は多くの視聴者をとりこに。何度も生きるか死ぬかの危機にさらされながら、セリは韓国に戻れるのか、2人の恋はどうなってしまうのか、と非現実的だがドラマならではの目を離すことができない展開が最後まで続き、多くの人を沼に引きずり込む。
 
さらに、ジョンヒョクの個性あふれる部下たち、ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)とソ・ダン(ソ・ジヘ)の恋、地の果てまでもセリとジョンヒョクを追い詰めるチョ・チョルガン(オ・マンソク)と脇を固める登場人物たちが物語をより一層盛り上げた。
 
そして、セリ役とジョンヒョク役がどハマりしていたソン・イェジンとヒョンビンは、22年に結婚し、第1子が誕生。ドラマよりもドラマチックな展開を迎えた。

「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(16~17年)最高視聴率20.5%

「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(DVD発売中)は、人気俳優コン・ユとキム・ゴウン、そしてヒットメーカーの脚本家キム・ウンスクがタッグを組んだファンタジーラブロマンス。韓国ドラマにハマったことがある人であれば、一度は「トッケビ」のタイトルを聞いたことがあるのではないだろうか、というほど必見の作品だ。
 
コン・ユが演じたのは、不滅の命を持つ〝トッケビ〟のシン。シンは、女子高生ウンタク(キム・ゴウン)と出会い、900年以上続く永遠の命から解放されようとしていた気持ちに葛藤が生じる。
 
屈託のないウンタクに、シンは次第に心を開き、無自覚ながらベタぼれに。900年以上も生きているのに、恋には鈍感すぎるシンの挙動不審な行動はいとおしくてほほえましい。命を巡る切ない恋物語でありつつも、死神(イ・ドンウク)との小競り合いばかりの奇妙な共同生活に思わず噴き出してしまうなど、笑いが絶妙なバランスで盛り込まれていた。
 
不器用で孤独な2人が心通わせていく過程が見事で、タイトルの通り「愛しい日々」が永遠に続いてほしいと願わずにはいられない内容に。トッケビと人間、2人の恋の行く末がどうなるのか読めず、胸が締め付けられるような物語は涙なしには見ることができない。
 
なお、脚本のキム・ウンスクは、「シークレット・ガーデン」「相続者たち」「太陽の末裔 Love Under The Sun」「ミスター・サンシャイン」と数々の名ドラマを担当。「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」(22~23年)では、これまでの作品とは異なる強烈な復讐(ふくしゅう)劇でその才能を見せつけた。

「恋のスケッチ ~応答せよ1988~」より ©CJ E&M Corporation, all rights reserved.

「恋のスケッチ〜応答せよ1988〜」(15~16年)最高視聴率18.8%

「恋のスケッチ〜応答せよ1988〜」(DVD発売中)は、ドラマ「応答せよ1997」「応答せよ1994」に次ぐ「応答せよ」シリーズ第3弾。1988年のソウル・オリンピックを控える韓国を舞台に物語は始まり、高校生のドクソン(ヘリ)の笑って泣けるまぶしい青春の日々を描く。
 
ドクソンは、幼なじみジョンファン(リュ・ジュンヨル)、ソヌ(コ・ギョンピョ)、テク(パク・ボゴム)、リュ・ドンリョン(イ・ドンフィ)との友情が一生変わらぬまま続くかと思っていた。しかし、友人の一言で思いがけない初恋や失恋、初めての感情を経験していく。
 
決して裕福ではないけれど人情味あふれたドクソンの家族と、彼女を取り巻く人々が生き生きと映し出され、共に青春の日々を送っているかのような錯覚になるほどリアル。10代の多感な時期に、痛みや喜びを感じながら成長していくドクソンに共感し、応援したくなっていく。
 
そして、視聴者の関心を引き続けたのは、ドクソンが誰と結婚したのかということ。時折挟み込まれる現代のパートでは、ドクソンが幼なじみと結婚していることが明らかになるが、終盤の終盤までその人物がジョンファンなのかテクなのかわからない展開となっている。
 
素直になりきれないジョンファンとかなり奥手のテク。どちらも違う魅力があるからこそ、彼らの恋にやきもき。最後まで引っ張るからこそ、ジョンファン派とテク派で意見がわかれ、視聴者も盛り上がる。
 
紹介した3作品は、実力のある俳優たちの演技と巧みな脚本がマッチ。そして、最後の最後まで、主人公が恋の相手とどうなるのかがわからないからこそ、物語を追いかけたくなるのかもしれない。
 
<画像使用作品>

「愛の不時着」
Netflixで独占配信中
※2024年5月現在の情報です。


「恋のスケッチ ~応答せよ1988~」
スペシャルプライス版コンパクトDVD-BOX1&2発売中
※2024年5月現在の情報です。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。