「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」より

「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」より© STUDIO DRAGON CORPORATION

2024.10.15

コン・ユ主演、息の長い人気のファンタジーラブロマンス「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

韓国ドラマで根強い人気を誇る「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(2016〜17年、全16話)が、みるアジア で配信されている。約8年前のドラマでも、色あせない魅力に迫る。
 

不滅の命を持つ男と、彼を唯一解放できる女子高生が出会う

本作は、不滅の命を持つ〝トッケビ〟のシンが、女子高生のウンタクと出会い、彼の運命が大きく動き出すファンタジーラブロマンス。シン役を「コーヒープリンス1号店」「新感染 ファイナル・エクスプレス」「イカゲーム」のコン・ユ、ウンタク役を「ユミの細胞たち」シリーズ、「シスターズ」のキム・ゴウンが担った。
 
高麗時代の武臣で英雄だったシンは、若き王の嫉妬により無念の死を遂げる。しかし、神の力によってトッケビとなり、900年以上もの永遠の命を生き続けることに。そんな彼の前に、永遠の命から解放できる唯一の〝トッケビの花嫁〟と名乗るウンタクが現れる。最初は疑っていたシンだが、純真で屈託のないウンタクと過ごすうちに、彼女にひかれ、永遠の命の終わりを望んでいた気持ちに迷いが生じていく。
 
普段はクールなシンだが、自分にまっすぐ向かい、時には「サランヘヨ(愛してる)」と純度100%の笑顔で伝えてくるウンタクにすっかりペースを乱されてしまう。次第に彼女のことが気になって仕方なくなる。にもかかわらず、鈍感なシンは自身の恋にあきれるほど無自覚で、好きな人にしかしないであろう言動が身もだえるほどじれったい。そんなシンが、ウンタクに「君の彼氏は私だ!」と宣言をして、慌てふためく姿には思わず頰が緩む。
 
900年以上ひとりだったシンと、母を失って叔母家族から冷遇されてきたウンタク。孤独だった2人だからこそ、彼らの不器用さがいとおしく、心通わせ愛を知っていく様子がとてつもなく尊く感じる。この恋が盛り上がれば盛り上がるほど、シンの永遠の命、そしてそれを終わらせることができるのがウンタク、という究極の運命であることに胸を締め付けられる。
 

イ・ドンウク、キム・ゴウン……。これ以上ない俳優陣のキャスティング

俳優陣もこれ以上ない布陣。カッコ良さと可愛さ、どちらも限界突破していたシン役のコン・ユは、トッケビという存在を「こういうものだ」とたたずまいだけで納得させる力があった。華やかな衣装も目の保養で、仕立てのいいスーツやロングコート姿はモデルのよう。かっちりとした着こなしと、ニットを着たときのふんわりとした印象のギャップはたまらない。
 
ウンタク役のキム・ゴウンもハマり役で、彼女の笑顔と涙には、シンのように何度も心揺さぶられた。裏表ない喜怒哀楽の演技も秀逸で、学生から大人の女性となり、纏う(まと)空気もガラリと変えてしまうのも圧巻だった。
 
物語に欠かせないのが、イ・ドンウクが演じた死神。シンと奇妙な同居生活を送ることになる死神は、涼しい顔をしてシンを挑発して、小競り合いになることばかり。それでも、ここぞの時には手を差し伸べたりと、ウンタクとは違う意味でシンの新たな一面を引き出す。コン・ユとイ・ドンウクの相性は最高で、シンと死神、そしてシンの家臣の末裔(まつえい)であるユ・ドクファ(BTOBのユク・ソンジェ)を交えた3人のやり取りも笑いを誘う。
 
さらに、死神とウンタクのバイト先の社長サニー(ユ・インナ)の恋も。シンに負けず劣らず恋愛に疎い死神によって2人はすれ違いの連続で、死神と人がどうなるのか、結末まで読めない展開だった。
 

素晴らしい映像美や盛り上げに貢献する音楽にも注目

また、美しい紅葉や雪景色、カナダのケベックで撮影された街並みなど、どのシーンも印象的で、その映像美がシンとウンタクの物語をより引き立てた。そして、雰囲気を盛り上げたのが、OST(オリジナル・サウンドトラック)たち。どの曲も〝神曲〟で、これ以上ドラマにぴったりな曲があるのだろうかと思うほど。OSTを聴くだけで彼らの物語が鮮明によみがえり、ドラマの世界へ引き戻される感覚になる。
 
そして、ヒットメーカーである脚本家キム・ウンスクの功績も大きいだろう。ヒョンビンとハ・ジウォン共演でヒットした「シークレット・ガーデン」、大ヒット学園ドラマ「相続者たち」、視聴率41.6%という驚異的な数字をたたき出した「太陽の末裔 Love Under The Sun」、Netflixで配信され世界でヒットした「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」(22~23年)と数多くの名作を生み出した。
 
視聴者の心をがっちりととらえ、シンドロームを巻き起こした本作は、最高視聴率20.5%を記録。さらに、韓国のゴールデングローブ賞とも呼ばれる第53回百想芸術大賞でテレビ部門の大賞、最優秀演技賞(男性)を受賞した。ちなみに、本ドラマが放送されたのは、韓国のケーブルテレビ局tvNで、「トッケビ」の視聴率を超えたのは、「愛の不時着」(19〜20年)と「涙の女王」(24年)のみである。
 
ちなみに、キャストには、「となりのMr.パーフェクト」のチョン・ヘイン、「偶然かな。」のキム・ソヒョン、「ブラームスは好きですか?」のキム・ミンジェ、「スタートアップ:夢の扉」のナム・ダルム、「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」のヨム・ヘラン、「医師チャ・ジョンスク」のキム・ビョンチョルという韓国ドラマ好きなら見たことのある顔ぶれも。さらに、今年スマッシュヒットした「ソンジェ背負って走れ」のキム・ヘユンも出演していた。

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ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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