第96回アカデミー賞授賞式は、3月10日。コロナ禍の影響に加え大規模ストライキにも直撃されながら、2023年は多彩な話題作、意外な問題作が賞レースを賑わせている。さて、オスカー像は誰の手に――。
2024.3.12
「オスカー像超重い」 「ゴジラ-1.0」が開いた〝聖域〟の門 アカデミー賞受賞会見
第96回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督らが帰国、12日に羽田空港で記者会見を開いた。山崎監督は「視覚効果賞はハリウッドの〝聖域〟。ポンコツチームの頑張りを面白がってくれた」と〝勝因〟を分析した。
シュワルツェネッガーからもらいたかったけど
山崎監督と視覚効果に携わった映像制作会社「白組」の渋谷紀世子、高橋正紀、野島達司がオスカー像を手に登壇した。受賞の瞬間を山崎監督は「オスカー像は想像を超える重さだった。うれしかった」と振り返ったが、オスカー像を手渡されたのがダニー・デビートだったことに「本当は(もう一人のプレゼンターだった)シュワルツェネッガーから……」。
授賞式に向けて現地で繰り返し上映会などを行い、働きかけてきたが、手応えを感じていたという。渋谷は「反応がとても良く、受賞は五分五分と思っていた。受賞すると言い続けていたが、名前を呼ばれた瞬間は驚いて舞い上がった」と明かした。
「ゴジラ-1.0」は昨年12月に全米で公開されヒットした。受賞の影響について山崎監督は、「日本映画が北米で興行的に成功し、受賞もしたことで今後の映画の作り方が変わる可能性がある」。野球の野茂英雄投手の後に大リーグに挑戦する選手が続いたことを挙げ「これをきっかけにワールドワイドな作品を目指せるようになったらいい」と期待を込めた。
世界的大スターのおかげ
アカデミー賞各部門の中で、視覚効果賞のほとんどはハリウッドの大作が受賞してきた。「ゴジラ-1.0」はその中では低予算作品。山崎監督は「視覚効果賞は多額の予算をかけ工夫を凝らした中からベストが選ばれる聖域。我々には挑戦権すらなかったが、門を開いてくれたことがうれしい」と喜んだ。
受賞の要因について渋谷は、「VFX(視覚効果)の初期に、知恵を絞ってもがいた頃を思い出したと言われた。温かい気持ちで見守ってくれたのでは」と推測。野島は「物語もよく、全てのピースがうまくはまった」、高橋も「候補作はすごい技術を使っていると思ったが、ゴジラの完成度も高いと改めて思った」と振り返った。
山崎監督は「少人数の低予算作品で、特異なケース。視覚効果が物語にいかに貢献したかを重視するので、ゴジラが作り出した恐怖感、絶望感が伝わった」と分析した。そして「ゴジラのおかげ」。現地での上映でも歓迎され「想像以上にワールドワイドの大スターだった」。
生意気な中学生の炎燃やし続け
一方で他の候補作との比較では「まだまだ。比べれば心がズタズタになる。オリンピックに来てしまったポンコツチームが面白ビデオを見せたという感じを、面白がってくれたのでは。コンピューターグラフィックスが使えなかった時代にいろんなことをやった人たちの琴線に触れたのかな」。
山崎監督は中学生の時に「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」を見て映画に魅了された。「生意気な中学生だった自分にオスカーをとったと言っても『アタマのおかしいおじさんがいる』と相手にされなかったのでは。しかし、あの頃見たかったものにどれだけ近づけるか、胸の炎を消さないようにと今まで来ている。生意気な中学生だった自分に感謝したい」としみじみ。「ここを到達点ではなく出発点として、挑戦を続けたい」と宣言した。