「ベンジャミン・バトン」で来日=2009年

「ベンジャミン・バトン」で来日=2009年

2022.8.24

俳優生活35年 ブラッド・ピットの衰えぬ魅力:映画ライターの金子裕子さんが振り返る、来日エピソード

俳優デビューから35年、トップスターであり続けるブラッド・ピット。最新主演作「ブレット・トレイン」の公開に合わせ、その変わらぬ魅力を徹底分析。映画人としてのキャリアの変遷、切り口ごとのオススメ作品、人柄を感じさせるエピソードと、多面的に迫ります。

金子裕子

金子裕子

新作「ブレット・トレイン」で“世界一運の悪い殺し屋”に扮し、イケおじの魅力を振りまくブラッド・ピット。58歳になったとはいえ、キュート&ダーティー&クレージー、そしてもちろんビューティーを絶妙にブレンドした独特の佇まいは相変わらず。歳を重ねた分だけ、うまみも増している。そんなブラッドの3年ぶりの来日が決定した。
 

初来日は「セブン・イヤーズ・イン・チベット」。まばゆいばかりの美しさだった

 
思い起こせば、初来日は「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(1997年)を携えた97年。33歳の時だから、じつに25年も前のことだ。作中で演じたオーストリア人登山家ハインリヒ・ハラ―の役作りのままにプラチナブロンドの髪で現れたブラッドのまばゆい美しさは、いま思い出してもうっとりする。
 
当時はちょっといたいけな少年の風情も残し、ひとりでは不安らしく、インタビューはすべてジャン=ジャック・アノー監督が横に座ってサポート。というか、撮影エピソードなどはほとんど監督が披露。
 
たとえば、アンデスの岩場の撮影中。監督はスタッフに忙しく指示を出すうちにブラッドがロープ1本で空中にぶら下がっていることを忘れてしまい、長時間放置。やっと気がついて引き上げられたブラッドは寒さで口もきけない状態だったそうだ。
 
「でも、ひと言も文句を言わなかったよね、ブラッド」と監督が話題を振ってくれると、「だって、あそこにはパパラッチがいなかったからね」と照れ笑い。そう、すでに“世界一美しいスター”として人気が沸騰し、パパラッチとファンに四六時中追いかけ回されるハードな日常をネタにした皮肉なジョークをポツリ。
 

「ジョー・ブラックをよろしく」
(C)1998 Universal Studios. All Rights Reserved. 

“ブラピ・フィーバー”が盛り上がるいっぽうだった2度目の来日

 
2回目の来日は「ジョー・ブラックをよろしく」(98年)を携えた98年。“ブラピ・フィーバー”は盛り上がるいっぽうで、取材申し込みが多すぎて、記者会見ではカメラマンが3グループに分けられた。しかも1グループ3分の撮影時間という条件付きだから、スタッフもピリピリ。
 
まぁ、ブラッド自身が、取材が苦手、騒がれるのが嫌いなタイプだから、周りが気を使うのも当然だった。しかし、取材現場に現れたご本人は終始にこやかでコメントもハキハキ。なかでも納得したのは。
 
「10年ほどのキャリアを積んできて、最近ちょっとだけ映画の仕事がわかったかなという感じ。だから、これからの数年間はいろいろなことを試して、自分はここまで行けるんだということを探ってみたい。もちろん、家族も作りたいしね」
 
あとになってその言葉を裏読みするなら、俳優としての演技評価を高めた「セブン」(95年)のデビッド・フィンチャー監督との再タッグ「ファイト・クラブ」(99年)で新境地を開拓中だったこともある。また、1番目の妻ジェニファー・アニストンとの交際が始まった頃だから“すでに結婚を考えていた?”なんてね。
 
ちなみに、「ジョー・ブラックをよろしく」がクロージング上映された東京国際映画祭のパーティーに参加したブラッドは、ワイングラスを片手にすっかりくつろいだ雰囲気。気軽に雑談にも応じてくれて、スターの輝きとちょっぴりの貫禄もあり。前回の来日時より、ずっと大人な感じがした。
 
余談だが、ブラッドは来日前からホテルにこもりっぱなしになることを見越して、当時のフォーシーズンズホテル椿山荘に宿泊することを指定していた。そう、椿山荘は史跡めぐりができる広大な日本庭園を有するホテルだから、騒がしい外に出なくても日本の歴史や様式美を楽しめる。もともと歴史や建築様式に興味を持っているブラッドは毎朝この庭をゆっくり散歩して英気を養っていたそうだ。
 
じつは、その後も「ザ・メキシカン」(2001年)、「オーシャンズ12」(04年)、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(08年)などの取材のためにロサンゼルスで会見している。その中でびっくりしたのが「ベンジャミン・バトン〜」の時。デビッド・フィンチャー監督や共演のケイト・ブランシェットと並んだブラッドはじつに能弁。
 
監督については「もっとも偉大なストーリーテラーであり、もっとも理解ある良い友人をみつけた。そして幸運なことに、彼はずっと僕のそばに居てくれてる」と、しみじみ語っていた。
 
この頃には、1回目の離婚を経験し、「Mr. & Mrs.スミス」(05年)の共演で恋に落ちたアンジェリーナ・ジョリーの影響よろしく、共同で慈善事業の財団も設立。同時に製作会社<プランBエンターテインメント>を拠点にプロデューサー業にも本腰を入れ始めていた。
 

2009年に来日したブラッド・ピット  

優しい父親の顔ものぞかせた「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」来日時

 
つまり、スターというより“映画人”として高い志を抱き、自覚と自信がついてきたということか。ロサンゼルス会見のあと、「ベンジャミン・バトン〜」の公開直前にはパートナーのアンジェリーナ・ジョリーと6人の子供を連れての来日。会見では「子供たちが喜ぶオススメの場所は?」などと、優しい父親の横顔もチラリのぞかせていた。


近年は「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」で来日。右は共同プロデューサーのデデ・ガードナー

その後も数回来日し(ほとんどが記者会見のみなのは、ちょっと残念だが)、近年では製作&主演を務めたNetflixオリジナル映画「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」(17年配信)のプロモーションで17年5月に、そして19年9月には「アド・アストラ」(19年)で来日。
 
となれば、「ブレット・トレイン」を引っさげてやって来る、3年ぶりの“生ブラピ”にファンもメディアも盛り上がることは間違いない。



<画像を使用した作品一覧>

●「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
ブルーレイ:¥2,381+税
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 1997 Mandalay Entertainment. All Rights Reserved.

●「ジョー・ブラックをよろしく」
好評発売中
ブルーレイ:¥2,075(税込) DVD:¥1,572税込
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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ライター
金子裕子

金子裕子

かねこ ゆうこ 映画ライター 映画ペンクラブ会員
 「週刊平凡」「HANAKO」(ともにマガジンハウス刊)などでキャリアをスタートさせ「CREA」(文藝春秋社)などの女性誌を始め、映画専門誌などで映画紹介、俳優・監督インタビューなどを執筆。現在「SWEET」宝島社)、「DUET」(ホーム社)、雑誌&Web「チャンネルガイド」(日宣)、「毎日が発見」(KADOKAWA)、「Stereo Sound ONLINE映画スターに恋して」などでレギュラー執筆。共著として「KEEP ON DREAMING 戸田奈津子」「ときめくフレーズ、きらめくシネマ」(ともに双葉社刊)

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