「ドライブ・マイ・カー」 ©「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

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2022.3.25

米アカデミー賞28日発表 新たな歴史の扉 開くか日本映画・配信作

94回目を迎える米国アカデミー賞のゆくえや結果を特集します。濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」が作品賞など4部門にノミネートされ、がぜん注目をあびる今年の賞レースを、ひとシネマ流にお伝えします。

ひとしねま

ひとシネマ編集部

作品賞など4部門候補「ドライブ・マイ・カー」にオスカー像は


第94回米アカデミー賞授賞式が27日(日本時間28日)、米ロサンゼルスで行われる。作品、監督、脚色、国際長編映画と4賞で候補入りした日本映画「ドライブ・マイ・カー」が、オスカー像をいくつ手にするか。多様化の波に加えて新型コロナウイルス禍で、ハリウッドは大きな変化を迫られている。今回も日本映画や配信作品が、オスカーの歴史を塗り替えるかもしれない。

主な候補一覧はこちら

村上春樹の小説を原作とした濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」は、ゴールデン・グローブ賞で非英語映画賞、全米批評家協会賞では作品、監督賞を受賞。米国での村上人気もあって評価は高い。日本映画が作品、脚色賞の候補になるのは初めて。監督賞は「乱」の黒沢明監督以来36年ぶりだ。いずれも受賞すれば日本人初、国際長編映画賞は「おくりびと」(当時は外国語映画賞)以来となる。アカデミー賞は人種多様化を目標に掲げ、2020年は韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)、21年は中国系米国人の女性監督、クロエ・ジャオの「ノマドランド」と、非白人監督の映画が連続受賞。次は日本映画の作品賞――も十分期待できそう。


「パワー・オブ・ザ・ドッグ」 KIRSTYGRIFFIN/NETFLIX

目立つリメークもの 本命は「ネトフリ」か

本命はネットフリックスの配信作品、ジェーン・カンピオン監督の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」か。1925年の米モンタナ州を舞台に、カリスマ的なカウボーイと少年の緊張した関係を描く。配信映画はここ数年、毎年のように有力候補とされながら作品賞に届かなかったが、前評判は上々だ。ネットフリックス念願の作品賞となるか。受賞すれば、2年連続で女性監督作品となる。11部門12の候補入りは今回最多だ。


「ウエスト・サイド・ストーリー」© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.



「コーダ あいのうた」 © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

作品賞候補はリメーク物が目立つ。「ウエスト・サイド・ストーリー」は61年のミュージカル映画を、スティーブン・スピルバーグ監督が再映画化。現代性を加味して、分断の悲しみを強調した。監督、助演女優など7部門で候補入り。「コーダ あいのうた」は、2014年のフランス映画のリメーク。4人家族で唯一の健聴者である主人公が、自身の夢と家族の間で葛藤する。助演男優賞など3部門でノミネート。


「ナイトメア・アリー」©2021 20th Century Studios. All rights reserved.


「DUNE/デューン砂の惑星」©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

「ナイトメア・アリー」はウィリアム・リンゼー・グレシャムの小説「ナイトメア・アリー 悪魔小路」の2度目の映画化。メキシコのギレルモ・デル・トロ監督が、妖しげなカーニバルの世界からのし上がっていく男の挫折をダークに描いた。「DUNE/デューン 砂の惑星」も2度目の映画化。フランスのドゥニ・ビルヌーブ監督が重厚な映像で描くSFだ。10部門で候補入り。


「ドント・ルック・アップ」 Netflix配信中


「ドリームプラン」© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved


「ベルファスト」 Ⓒ2021 Focus Features, LLC.


「リコリス・ピザ」© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

「ドント・ルック・アップ」もネットフリックス作品で、オスカーには珍しいコメディー。一方、伝記映画「ドリームプラン」、アイルランド紛争がテーマの「ベルファスト」とも、こちらはオスカー好みの実録もの。

もはや配信なくしてアカデミー賞なし。特にネットフリックスは、ドキュメンタリーやアニメーションなども合わせ、10作品の候補の合計が27を数える。俳優賞でも4賞20人の候補のうち、13人が配信作品の出演者だ。

男女助演賞候補に新しい顔ぶれ並ぶ

俳優賞では、主演は男女とも、オスカー俳優が多数候補入り。その中で、ウィル・スミスとベネディクト・カンバーバッチは作品にも恵まれ、初受賞なるか。助演賞は男女とも新しい顔ぶれ。「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でカンバーバッチと渡り合ったコディ・スミット・マクフィーは、子役出身の25歳。「コーダ」に出演したトロイ・コッツァーは、ろう者の俳優だ。助演女優賞も、ジュディ・デンチ以外は、みな初めての候補入りだ。監督賞候補の中では、濱口監督は一番の若手。スピルバーグ、ジェーン・カンピオンら大物の中で異彩を放っている。

ライター
ひとしねま

ひとシネマ編集部

ひとシネマ編集部