©2020 「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

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2021.3.18

まともじゃないのは君も一緒

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

数学ひと筋で生きてきた予備校講師の大野(成田凌)は、思考回路が普通ではなくコミュニケーションがうまくいかない男。生徒の香住(清原果耶)から「そのままじゃ一生結婚できない」と批判された大野は、彼女の恋愛指南を受けることに。ところがその道の上級者を気取る香住は、実は恋愛経験ゼロだった。

男と女のああ言えばこう言うスピーディーな会話の応酬で見せる恋愛コメディー。理系人間の青年と口達者な少女の迷コンビが、青年実業家(小泉孝太郎)とその婚約者(泉里香)に接近し、普通の恋愛や普通の人生とは何なのかという問題にぶちあたっていく姿を描く。劇中のセリフに頻出する〝普通〟というキーワードが、他者への同調やそんたくを求める世相へのアンチテーゼにもなっているのが面白い。それに何より成田と清原の掛け合いが愉快痛快。俳優たちの生っぽいリアクションをすくい取って映画を弾ませ、軽やかに物語を転がす前田弘二監督の話術もさえている。1時間38分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

ここに注目

大野も香住もちょっと極端だけど、なんとなく身近にいそうな魅力的なキャラクターで、「普通でいることが幸せ」という固定観念を打ち破ってくれる。誰でも人と違うところがあるのは当たり前。他者を「普通ではない」と断じることの危うさに改めて気付かされる。(倉)