2022年もはや7月。上半期の映画界では、新作に加えてコロナ禍で延期されていた作品がようやく公開され、ヒットも続発。映画館のにぎわいも戻ってきた。ひとシネマ執筆陣が5本を選び、上半期を振り返ります。
2022.7.09
破滅的暴走劇に清らかな余韻「ライダーズ・オブ・ジャスティス」 高橋諭治
①「ライダーズ・オブ・ジャスティス」(アナス・トマス・イェンセン監督)
②「春原さんのうた」(杉田協士監督)
③「夜を走る」(佐向大監督)
④「MEMORIA メモリア」(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督)
⑤「あなたの顔の前に」(ホン・サンス監督)
「春原さんのうた」
アケルマン特集 若者でにぎわい
①は北欧随一の天才脚本家アナス・トマス・イェンセン、5年ぶりの監督作。欠陥だらけの人間たちが繰り広げる破滅的な暴走劇でありながら、鑑賞後には清らかなおとぎ話に触れたような余韻が残る。邦画の②③は作風がまったく違うが、ごく普通の日常の裂け目に潜む〝不穏な別次元〟を表出させたかのような異形の2作品。アピチャッポン・ウィーラセタクンの摩訶(まか)不思議な超常現象映画④、一日の出来事を淡々とつづった映像世界に底知れない神秘性が感じられるホン・サンスの⑤にもゾクゾクさせられた。
特筆すべきトピックは、ヒューマントラストシネマ渋谷の「シャンタル・アケルマン映画祭」が連日大盛況だったこと。未見のままだったアケルマン作品を鑑賞できて個人的にもうれしい企画だったが、なぜ「ブリュッセル 1080 コメルス河畔通り 23番地 ジャンヌ・ディエルマン」にあんなにも大勢の若い映画ファンが押し寄せたのか? 上半期最大のミステリーである。
シネマの週末 特選掘り出し!:「ライダーズ・オブ・ジャスティス」 自らの心の闇と向き合う