ライダーズ・オブ・ジャスティス © 2020 Zentropa Entertainments3 ApS & Zentropa Sweden AB.

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2022.1.20

特選掘り出し!:ライダーズ・オブ・ジャスティス 自らの心の闇と向き合う

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

デンマーク映画といえば米アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた「アナザーラウンド」が記憶に新しいが、こちらも見逃し厳禁の1本。世界有数のユニークな物語の語り手で、マッツ・ミケルセンとのコンビで「アダムズ・アップル」などを放ってきたアナス・トマス・イェンセン監督の新作だ。

列車事故に巻き込まれた妻の訃報に接し、出征先から帰国した軍人マークス(ミケルセン)。悲しみに暮れる娘とのすれ違いが続くなか、列車事故がギャング団による計画的殺人だと知らされたマークスは、怒りの報復に乗り出す。

復讐(ふくしゅう)劇の形でイェンセン監督が描くのは、マークスのもとに集った統計学の研究者(ニコライ・リー・コース)、肥満体のハッカーといった風変わりな登場人物たち。彼らは皆メンタルに問題を抱え、無神論者のマークスも制御不能の暴力衝動にさいなまれている。

毒々しい笑いをちりばめた本作は、欠陥だらけの不完全な人間が耐えがたい苦しみや自らの心の闇と向き合う方法を探求していく。アンモラルで陰惨な場面が満載なのに、最後に訪れる感動は清らかですらある。人生の偶然と不確実性についての考察も面白い。1時間56分。東京・新宿武蔵野館、大阪・梅田ブルク7ほか。(諭)