©円谷プロ ©ウルトラマンブレーザー特別編製作委員会

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2024.2.28

「ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突」公開中! 「円谷プロ」と「ドコモ」――コンテンツとIDネットワーク結合の必然-後編-

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

ひとしねま

公野勉

名実ともに国内最大キャリアであるドコモと、日本の誇るコンテンツブランドの円谷プロダクションがパートナーシップを発表して2年以上がたった。携帯電話をソリューションとしたマーケティングサービスを拡充し続けるドコモ、創立60周年を迎え、現在全国で「ウルトラマンブレーザーTHE MOVIE 大怪獣首都衝突」公開中のほか、「ウルトラマンシリーズ」のグローバルな展開を推し進める円谷プロダクションが組んで、いったい何を起こそうとしているのか。なぜ今、キャリアがコンテンツと提携するのか。それは挑戦なのか、それとも経営の集団的自衛なのか。
キーマンとなるふたり、円谷プロダクションの大塩忠正執行役員とドコモの石橋英城マーケティングイノベーション部長に話を聞いたその後編。


 

9.新しい息遣い――遺棄するものと拾うもの

公野――塚越隆行さんがジョイントされてから、各方向へのさまざまなアプローチが素晴らしいと感じています。
 
大塩――塚越が就任した直後くらいからNetflixさんと取り組んできた企画、「ULTRAMAN: RISING」が今年配信されます。円谷プロではこの作品をきっかけに現在成長軌道に乗りつつある中国・アジア以外のテリトリー、特に北米市場を中心にテリトリーを拡大すべく全社的に取り組んでいます。
 
公野――招待いただいた11月のTSUBURAYA CONVENTIONでもあらゆるタイプのプロジェクトが発表されていて、「ここまで手が回るのか?」と心配になるほど興奮しましたが。塚越さんも原稿無しで、まるでジョブズのようにファシリテートされていました。ご自身、ウルトラの世界観がお好きなんですね、きっと(笑い)。
 
大塩――基本的には塚越が就任してから、彼が立ち上げたビジョンと戦略に基づいて、コンベンションでご紹介したひとつひとつのプロジェクトや作品が生まれているので、すべて戦略的につながっている。作品すべてがつながったひとつのポートフォリオなんです。
 
公野――COOの永竹正幸さんとはタカラトミーでご一緒していたんですが、CEOである塚越さんとの職掌というか、職域の分担はどのようになっているんですか。
 
大塩――中長期的なビジョンやそれを実現する大きな体制のデザイン、またブランドの発信や作品にかかるプロダクション的な領域を塚越が管掌し、永竹はその戦略を事業レベルで実行・実現し、マーチャンダイジングを中心に収益化する執行責任者ですね。
 
公野――大塩さんは「TSUBURAYA IMAGINATION」がエンドユーザーとの直結が最大の目的であり、テーマなのだと話してくれました。その上でこれからもずっと作り続けていく中で、ひとつの基軸がクリエーターとの真摯(しんし)な向き合いだということなんですね。そのあたりはやっぱりディズニー出身の塚越イズム発なんでしょうか。
 
大塩――私が知る限り、円谷プロには常にその姿勢はありました。塚越が来てからさらに丁寧に掘り起こして向き合ったという印象です。「TSUBURAYA IMAGINATION」の中にも収録されている「ウルトラマンアーカイブス」という、過去のクリエーターたちの証言をちゃんと残そうというプロジェクトがあり今も更新されているのですが、これは塚越が来て最初に手掛けたプロジェクトの一つです。
 
公野――かつては会社と向き合うような姿勢だった方々が、顕彰される立場で丁寧にコメントをしているのを見て、「変わったなあ、実に良い会社になったなあ」と強く感じました。ディズニーやマーベルもここ数年、すごく著作者人格権を尊重する戦略を取っていて、クリエーターたちが納得することが、ファンのいちばん喜ぶことだとする姿勢に変わってきている。アニメーションのコンテンツでもこの人格権的問題はけっこう起きていまして、ここ数年、出版社や放送局も苦慮している大きな課題です。円谷プロさんは先行的に対応されていて、ファンを喜ばせているんですね。
 
大塩――本当に現場のスタッフは全員その意味を理解して動いている感じです。撮影にしろ、トークライブにしてもイベントにしてもクリエーターや出演者へのリスペクトにはすごいものがあります。
 
公野――会社としてのその姿勢がきちんと見えているので、全員がプロジェクトに安心して参加できるのだなと感じます。

円谷プロダクション大塩忠正執行役員
 

 10.遺産と開拓――アーカイブビジネスの新しい領域へ

公野――円谷プロのコンテンツというのは昔から非常に教育的な視点が持ち込まれていました。「故郷は地球」(「ウルトラマン」第23話。開発競争の末、遺棄された宇宙飛行士が怪獣化して帰還、復讐=ふくしゅう=するストーリー)や、「ノンマルトの使者」(「ウルトラセブン」第42話。侵略されたはずの地球人が実は侵略者だったという物語)など、幼いながらにも考えさせられる話がありました。また、一方で宇宙や科学、生物など、非常に教育的、学問的な要素がたくさん盛り込まれたコンテンツだと思います。円谷プロさんの方ではこのような要素を持つ資産を生かして、「TSUBURAYA IMAGINATION」で教育的なサービスを展開していく計画はありますでしょうか。
 
大塩――ドコモさんとの協業の中で、教育領域を開発するのは大いにあると感じています。一方で当社はいま、「良いストーリーを作る」会社になることにフォーカスしているので、「教育のためにストーリーを作る」ということを活動の主軸に据えることはないと思います。先ほど挙げていただいた作品たちも、何より人々の心に残る良い物語であったことが一義であったはずです。当時のクリエーターたちがあの時代の中で生み出した物語が、結果として教育的にも響く作品になった――ということだと思うので、まずは良い物語を作ることが私たちの最優先課題だと思っています。物語の中に当社のブランドプロミスである「勇気」「希望」「思いやり」の要素を込めていきたいと考えています。と言いつつも事業側面でドコモさんのようなパートナーがそばにいてくれるわけで、教育を事業化していくことはかなりエンドユーザーへの効果が大きいのではないかと思っています。
 
公野――円谷プロ×ドコモの2社連合であれば、十分、取り組みの可能性があると思いますね。石橋さんの方で現行ソリューションを活用した、教育領域へのアプローチは可能なんでしょうか。
 
石橋――ドコモグループ全体として可能性があるかもと思っています。学校や教育事業を意識した子ども向けのサービスはすでにいくつかあるんです。そこへコンテンツを活用するアプローチは有り得るでしょうね。少子化が進み、子どもたちのスマホへの接触時期も早く、多くなり、教育的ITソリューションに触れて次のマーケットの資源になっていく可能性は十分あります。やはりインフラとしてのドコモには大事な領域です。
 
公野――VR対応に関してはどういう姿勢でしょう。
 
大塩――そこは非常に関心を持っています。われわれは〝 先端映像 〟〝特撮の先駆け〟という創業以来のコンセプトをいまだ自任しています。当時の最新の技術でさまざまな作品を生み出してきたという遺伝子は健在なんです。円谷英二が現代に生きていたらミニチュアを使って撮っていない可能性だってある。そういう時代に私たちは何をすべきか、という視点で常に制作チームや経営企画は映像技術の実験を進めています。先ほどお話しした通り「TSUBURAYA IMAGINATION」を始めるにあたってドコモさんに提案した中にXRも含まれていました。より深くて直接的なファンへのCRM(顧客関係管理)だけではなく、XR(クロスリアリティー。現実と仮想空間を融合させる技術体系)の新しい体験など、いくつも新技術の開発が協業されていまして、ドコモさんには19~20年ごろからウルトラマンをテーマとした技術実証コンテンツを「オープンハウス」(ドコモのBtoBコンベンション)でやっていただきました。また、ドコモさんが設立されたNTTコノキューさんにて先日リリースされた「ウルトラセブン55周年」のAR映像なども基本的には同様の流れから生まれたコンテンツです。

11.理想でしかなかったコンテンツマーケティングの実現へ

大塩――かつて代理店にいた時代によく〝 コンテンツマーケティング 〟というキーワードが出ていました。強く興味を持って取り組んでいましたけども、当時から難しい課題だった。コンテンツ制作現場とマーケティング、それぞれの事情のギャップが実現を難しくさせていた。だけど今回の「DATA EVOLUTION」であれば〝 コンテンツマーケティング〟が実現できるんじゃないかと思うんです。
 
公野――難しい課題で、失敗も多い領域でした。
 
大塩――まだ乗り越えるべき山はありますが、データの量と質と分析技術が進化し、利活用の幅が広がったことで、クリエーティブ観点でも使えるものになりつつある。いままでギャップの元になっていたデータが、ギャップを埋める役割を果たせるようになってきている。
 
石橋――そう、クリエーターが面白がって触るようなデータの使い方や見せ方を実現できるようになるとだいぶ面白くなると思うんですよ。
 
公野――投機性というか博打(ばくち)性と言いますか、「データ上はこれが鉄板なんだけどもこういう変化球を投げてみる可能性も出てるよ」っていう意外性のような部分まで分析できて、データで示せればいいですよね。
 
大塩――その指摘は的を射ています。これまではデータドリブンにやり過ぎてしまうと縮小再生産にしかならなかった。それをブレークさせるのがクリエーティビティーだったのも事実です。だからこそ今回の掛け合わせのデータマーケティングの中からブレイクの要素が読み取れると素晴らしいと思っているんです。
 
石橋――それこそがデータから読み取れるシードであり、企画であるべきなんだよね。

ドコモ石橋英城マーケティングイノベーション部長

12.新しいソリューション、その目的地--展望と課題

公野――では最後に大塩さんに改めてお聞きします。今回の「TSUBURAYA IMAGINATION」のゴールや課題はどこにあるのでしょうか。
 
大塩――「TSUBURAYA IMAGINATION」を通した共同事業で円谷プロとドコモが目指すゴールは、究極的には「顧客データを活用した、究極のファンエンゲージメントサービスの実現」です。円谷プロが生み出すストーリーやキャラクターの世界と、それを好きでいてくださるファンの方々のニーズやライフスタイルとのマッチングを、データに基づいて行い、改善し、新たな作品・イベント・商品・ファンサービス等に究極的に反映していくことで、ファンの方々により満足いただけるTSUBURAYA体験を提供し続ける――それがゴールです。課題はそのデータを活用したファンの方々の声を反映した具体的な作品の開発ですが、これはその「DATA EVOLUTION」の成果が見えてきた時に可能になると考えています。楽しみに待っていてください!
 
公野――大塩さん、石橋さん、今日はありがとうございました。

 

13.円谷プロとドコモの二重奏――その可能性

通信以外のマーケティングエンジニアリングを拡張し続けるドコモと、創立60周年を迎えてコンテンツの創出がやまない円谷プロ。同時に両社とも従来の看板を据え置きつつ、新しい領域へと進化を開始している。筆者は30年ほど前に新卒で円谷プロに入社した。それは色覚障害があって当時のテレビ局では制作職に就けなかったことも理由であったが、全日本テレビ番組製作社連盟セミナーで当時の円谷プロの代表と話したことが理由としては大きい。障害を気に病む私に代表は「そんなの関係無いよ。障害だって技術で克服できるんだ。無いものを在るように撮る特撮ってすてきだろう? キャラクターコンテンツには無限の可能性があるんだ」と話してくれた。この言葉がいまもコンテンツ業界に筆者の身を置かせていると言っても過言ではない。
現在の代表の塚越は着任時に「『円谷プロをディズニーのような会社にしたい』と声をかけていただいた」と語る。「ディズニーはひとつの作品を舞台や商品、パークなどに展開する『フランチャイズ』という手法を得意としています。作品の世界観を広げることでお客様に楽しんでいただくスペシャリストです。円谷プロとディズニーには共通点がある」とも語っている。この思想がバンダイナムコグループ全体で195億円(2022年度)もの売り上げを生む原動力となり、同時にライセンシー事業を超えてドコモとの提携を生み出したのだ。
株式の転売が続いた時期よりも、円谷プロの企業価値の含み益は莫大(ばくだい)だ。海外係争も着地させてNetflix等、新メディアでのトライアルも始まり、映画事業も東宝配給の「シン・ウルトラマン」以降は従来の配給体制を転換する等、積極的姿勢を見せている。ドコモも新しいデータソリューションを引っ提げて円谷プロとの提携を契機にコンテンツとの真っ向の協業を決心した。ウルトラマンだけでなく「怪獣文化」をも商品化していくその経営姿勢は、ハリウッドをはじめとするグローバルなコンテンツビジネスへの大きなインパクトとなるだろう。コンテンツをレバレッジとした両社のソリューションの価値は今後いっそう注目されていくはずだ。

「ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突」が公開!「円谷プロ」と「ドコモ」――コンテンツとIDネットワーク結合の必然ー前編ー - ひとシネマ (mainichi.jp)

TSUBURAYA IMAGINATION https://m-78.jp/lp/ti/free-plan/
 

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ライター
ひとしねま

公野勉

山口県出身。1993年日本大大学院法学部研究科修了。円谷プロダクション入社後、東北新社、ギャガを経て日活の製作・配給担当取締役。タカラトミーでコンテンツ・スーパーバイザー、タツノコプロの担当役員を務め、現在は文京学院大学で後進育成を行いつつ、映画監督や舞台コンテンツの製作等を続けている。日本映画監督協会所属。

カメラマン
田辺麻衣子

田辺麻衣子

たなべ・まいこ 2001年九州産業大学芸術学部写真学科卒業後スタジオカメラマンとして勤務。04年に独立し、06年猫のいるフォトサロンPINK BUTTERFLYを立ち上げる。企業、個人などさまざまな撮影を行いながら縁をつなぐことをモットーに活動中。

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