来日したプチョン国際ファンタスティック映画祭のプログラムディレクター・エレン・キムさん

来日したプチョン国際ファンタスティック映画祭のプログラムディレクター・エレン・キムさん

2023.3.27

インタビュー:エレン・キム 「プチョン国際ファンタスティック映画祭がアジアの公共としての発展の場になる」

映画でも配信でも、魅力的な作品を次々と送り出す韓国。これから公開、あるいは配信中の映画、シリーズの見どころ、注目の俳優を紹介。強力作品を生み出す製作現場の裏話も、現地からお伝えします。熱心なファンはもちろん、これから見るという方に、ひとシネマが最新情報をお届けします。

宮脇祐介

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偶然にも尹錫悦韓国大統領の来日の翌週、プチョン(富川)国際ファンタスティック映画祭のプログラムディレクター・エレン・キムさんが来日し毎日新聞社を訪問した。同映画祭は昨年から勝田友巳ひとシネマ編集長も参加して友好を深めている。
 

「同映画祭がアジアの公共としての発展の場」になることを熱望

この映画祭は世界メニエル連盟に加入するアジア唯一の映画祭で、現在アジアのジャンル映画祭をけん引している。運営資金は韓国の韓国映画振興委員会(コフィック)や京畿道、富川市の負担を基に協賛を集め運営している。その予算は日本の映画祭よりはるかに潤沢で、特に今年は富川市制50周年を記念して行われるのでさらに華やかになることは間違いない。
 
韓国の映画産業は1997年の国際通貨基金(IMF)ショック以来、ITと並び国の重要輸出品目に定められた。それから約四半世紀の躍動は皆さんの知るところ。そんな韓国映画界の一翼を背負うエレンさんは「同映画祭がアジアの公共としての発展の場」になることを熱望している。釜山国際映画祭に次ぐ韓国第2の規模の同映画祭の開催とこれからの戦略を聞いた。
 
「開催は6月29日〜7月9日、ソウルの西南西20キロの工業都市富川市で開かれる」とにこやかに話し始めるエレンさん。「映画祭はレッドカーペットや上映、パーティーだけでは成り立たない。マーケットや国際共同製作の場になることが必要だ」と語る。自らもホン・サンスなどの製作だけでなく、多くの国際共同製作を行ってきたプロデューサー出身者らしい話である。

 

メード・イン・アジアを開催

今回の来日の目的は、今年から始まった新潟国際アニメーション映画祭視察と日本の映画製作各社の訪問や映画祭招待作品のスクリーニング。
「各会社の国際部とは日ごろのやり取りを行っているが、国際共同製作となると、それぞれの企画、プロデュースを行っている部署の方々との連携が必要になってくる」
 
「まずは東京で顔合わせをして、富川に招待を考えている。映画祭では12の国と地域のメード・イン・アジアを開催している。鼎談(ていだん)などフォーラム的なものだけでなく、各国のボックス・オフィスのランキングや映画興行情報を収集・分析し年に1度ホームページで発表している。例えば、インドネシアの年間トップ10はホラー映画が占めているとか、日本は邦画アニメが強いとか」
アジア各国の興行状況を見える化して、来るべき国際共同製作時代のためのデータ収集を行っている。
「日本のキープレーヤーの他12カ国の人々を集めて国際共同製作のきっかけとなる場を作りたい。クリエーティブも製作者も併せて交流してほしい」と意欲を語る。
 

個人の持つ公共の心が国同士を強くつなげる

日本の映画界の現状に「1.2億人の国内市場で成り立つ企画がほとんど。6000万人の韓国は最初から世界市場を見ないと映画が成立しない。それがゆえに約四半世紀で世界にも通用するようになった。日本も海外に目を向ける時が来た。同映画祭がきっかけになれば」とエールを送る。
 
エレンさんは日本映画が特に好きで「羅生門」などの名作から、若松孝二作品、プログラマーとして招待した三池崇史監督「ゼブラーマン」など幅広く親しんでいる。今回も「メジャー、インディペンデント関係なく観客が面白いと思うものをプログラミングしていきたい」と抱負を語った。
 
プライベートでは中学3年生の男の子の母。エレキギターを弾く姿のビデオをうれしそうに見せてくれた。

 
1時間半にも及ぶ話の中で「パブリック(公共)」という言葉が何度も出てきた。国の首脳同士の友好はもちろんだが、個人の持つ公共の心が国同士を強くつなげる力になると深く共感したインタビューだった。
 
BIFAN首席プログラマーアジア映画担当
エレンㆍキム(キムㆍヨンドク)
ソウル大学美学科卒業、聖公会大学院文化企画専攻。
1990年代から映画と縁を結び、2001年に第5回BIFANから4年間プログラマーを歴任した後、国際フィルムマーケット、映画製作会社、映画輸入会社などで活躍し、16年に第20回BIFANからプログラムディレクターに復帰した。
02年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された「涙女」(リュウㆍビンジェン監督ㆍ02)、11年の台北映画祭新人監督賞を受賞した「Hanaan」(ルスランㆍパク監督ㆍ11)、2022年の釜山国際映画祭ワイドアングル部門正式出品作であり、韓国の権威ある映画賞である野花映画賞のグランプリを手にした「ミシンを踏む女たち」(イㆍヒョンネ、キムㆍジョンヨン監督ㆍ22)を製作し、ホンㆍサンス監督の「アバンチュールはパリで」(08)のプロデューサーを歴任した。

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

カメラマン
宮脇祐介

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みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

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