サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ c)2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.

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2021.9.30

特選掘り出し!:サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~ 失った日常、葛藤を繊細に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

米アカデミー賞で作品賞など6部門にノミネート(音響賞、編集賞を受賞)されながらも、アマゾンでの配信にとどまっていた秀作の劇場公開が実現した。主人公ルーベン(リズ・アーメッド)はメタルバンドのドラマー。トレーラーハウスでの巡業中、医師から回復の見込みのない重度の難聴だと宣告された彼の苦悩を描く。

轟音(ごうおん)鳴り響く音楽の日常を失ったルーベンは、絶望して自暴自棄に陥る。やがて彼が身を寄せたのは、ベトナム帰還兵の男(ポール・レイシー)が運営するろう者の支援コミュニティー。映画はそこで入居者や子供たちと交流し、手話を学ぶルーベンの姿をドキュメンタリーのように映し出す。無音の現実を受け入れるべきか、それともインプラント手術によって疑似的な聴覚を取り戻すべきか。そんなルーベンの葛藤を静かに、繊細に見すえる本作は、魂の救済という根源的な問題に触れていく。

劇場公開の意義は、あてどなく漂流する主人公の聴覚を表現した豊かな音響効果にある。これは美しい静寂や耳をつんざくノイズを知覚し、私たちの世界を再発見する映画でもある。ダリウス・マーダー監督。2時間。東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(諭)

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