© 2008「東京少女」製作委員会

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2023.5.02

どの年代の夏帆さんを見ても自然体でありつつ、不思議な魅力がある「東京少女」

Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。

古庄菜々夏

古庄菜々夏

私がこのコラムを執筆させてもらうのは2回目だが、執筆するにあたって私が書く理由みたいなものを最近、悶々(もんもん)と考えていた。そこで、役者志望が役者について語るのは気が引けるが、キャラクター自身だけではなく演者に注目したコラムも面白いのではないかと思った。
 
今回の映画だと、主演である夏帆さんが印象的だった。この映画の公開前年2007年「天然コケッコー」で映画初主演を果たしており、私が近年拝見する夏帆さんとは違うあどけない少女がそこにはいた。夏帆さんが芸能活動を始めたのは03年、私が生まれた年だ。近年の夏帆さんのイメージだと、15年「海街diary」や22年「さかなのこ」、テレビドラマでは同年「silent」や23年「ブラッシュアップライフ」があげられる。近年の話題作に幅広い役で次々と出演している夏帆さんだが、この作品ではそんな夏帆さんとはまた違うあどけなさが残る彼女を感じた。役者として10代、20代、そして30代と年齢によって感じることや、求められるものも変わるのではないかと思う。自分自身と向き合い続け、期待に応え続けてきたであろう夏帆さんだからこそ、どの年代の夏帆さんを見ても自然体でありつつ、不思議な魅力があるのだ。
 
私もそんなふうに続けていける役者を目指したい。これは先日、東京で役者として活躍する先輩に役者になろうと思った理由を聞いた際に、「役者には定年がない、だから面白いと思った」とおっしゃっていた。その時このコラムのことを思い出した。未熟だからこそ表現できるものもあれば、老いることで魅力的に映る表現もあるのが役者の一生なのであり、それが心を惹(ひ)かれる部分なのかなと思った。
 
このコラムでは2000~2009年代の映画に注目しているためこんなふうに、近年活躍する役者の若かりし頃に出会える良いきっかけとなる。さて、ここからは内容について少し触れたいと思う。明治と平成、二つの時代に生きる未歩と時次郎はお互い一1度も会わないまま別れを迎える。会っていないのに別れるなんておかしいと思うかもしれないが、それがこの映画の醍醐味(だいごみ)であり、この映画をより魅力的にしている要素である。この映画内で終始2人をつないでいたのは一つの携帯電話だった。映画の冒頭、未歩が落とした携帯電話が明治時代に生きる時次郎という少年の元へ届く。小説家志望であること、お互いに片親をなくしていることなど共通点があり意気投合し、携帯電話を通して自身の悩みや夢を語り合う仲となり、徐々にお互いを意識するようになっていく。
 
なぜ私がこの物語に惹かれたのかというと、私はタイムスリップはせずとも共感する部分があったからだ。というのも、この映画を教えてくれたのは海外に住む同年代の友達なのだ。その友達とはよくチャットをしたり電話をしたりするのだが、時差の関係で電話ができる時間が限られているうえに、離れているから簡単には会うことができない。携帯電話が唯一私たちをつないでくれる手段なのだ。そんな中で、近況やお互いに見た映画の感想などを共有し合う時間は私にとっては何にも代えがたいものである。これは、地元にいる家族や友達にも言える。特に4月は、地元から離れて生活を始める人も多い時期。離れていても、伝えられるうちに思いを伝えることの大切さを教えてくれるこの作品は、きっと新生活が始まった人の胸にも響くだろう。
 
先ほど、「伝えられるうちに」と表記したのには意図がある。映画の内容に戻るが、2人が思いを通わせ始めたころ、未歩は現代で重大な事実にたどり着いてしまう。時次郎は池で溺れて死んでしまったという新聞の記述を見つけるのだ。未歩は電話で時次郎にそのことを伝えるのだが、肝心なところで電話は切れてしまう。
 
しかし、そこで物語は終わらない。時次郎が最後に未歩に届けようとしたメッセージは思いがけない形で未歩の元へ届くことになる。未歩だからこそ受け取ることのできる時次郎の思い。ぜひ映画を見て確かめてほしい。
 
Huluで配信中

ライター
古庄菜々夏

古庄菜々夏

ふるしょう・ななか
2003年7月25日生まれ。福岡県出身。高校の時に学生だけで撮影した「今日も明日も負け犬。」(西山夏実監督)に主演し「高校生のためのeiga worldcup2021」 最優秀作品賞、最優秀女子演技賞を授賞。All American High school Film Festival 2022(全米国際映画祭2022)に参加。現在は東京の大学に通いながら俳優を目指す。

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