「宮松と山下」©2022「宮松と山下」製作委員会

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2022.11.18

「宮松と山下」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画界に人材を輩出する東京芸大大学院映像研究科。今作は研究室を率いた佐藤雅彦と、教え子の関友太郎、平瀬謙太朗が共同で脚本、監督、編集を手がけている。

エキストラをする記憶喪失の宮松(香川照之)の元に、ある時、知り合いという男が訪ねてくる。という筋立てはさほど重要ではない。宮松の正体とかその心情とか、キャラクターを掘り下げる映画ともちょっと違う。映画表現をさまざまに用いて、観客にどんな影響を与えられるかを測る実験のようである。

冒頭、一人の武士が襲ってきた数人を斬り伏せる。武士が去った後、一人がムクリと起き上がって走り出す。この映画は時代劇かと思いきやその男、物陰で急いで着替え、きっかけを待って次の場面に飛び出してゆく。実は撮影所で、その男が宮松である。エキストラとして虚構を演じる宮松と映画内現実の宮松が切れ目なく続き、だまし絵のような映像の連続。地味な映画だが実に刺激的なのである。1時間27分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル・梅田ほか。(勝)

ここに注目

エキストラか私生活かで翻弄(ほんろう)され、まんまとしてやられた感覚が心地いい。入れ代わり殺される名もなき役に、記憶を失った自身を絡めた作劇が巧みだ。セリフを最小限に抑えた脚本や浮遊感を生かすために、役者の表情もさらに抑制してもよかったのではないか。(鈴)

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