「TITANE/チタン」 © KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 ©Carole_Bethuel

「TITANE/チタン」 © KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 ©Carole_Bethuel

2022.7.09

倒錯の果ての反転と希望 「TITANE/チタン」 勝田友巳

2022年もはや7月。上半期の映画界では、新作に加えてコロナ禍で延期されていた作品がようやく公開され、ヒットも続発。映画館のにぎわいも戻ってきた。ひとシネマ執筆陣が5本を選び、上半期を振り返ります。

勝田友巳

勝田友巳

①     「TITANE/チタン」(ジュリア・デュクルノー監督)
②     「ニューオーダー」(ミシェル・フランコ監督)
③     「PLAN 75」(早川千絵監督)
④     「アンラッキー・セックスまたはいかれたポルノ」(ラドゥ・ジュデ監督)
⑤     「マイスモールランド」(川和田恵真監督)

不穏な空気映画にも漂う

コロナ禍の出口がなかなか見えないのに、ウクライナでの戦火が伝わりその影響が生活にも及び、世の中の不安な気分は募るばかり。映画に映った社会も不穏な空気が漂っているような。
 

「ニューオーダー」 ©2020 Lo que algunos soñaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici

皮肉で希望のないディストピアを描いた「ニューオーダー」はメキシコの現実を映し、ルーマニアの「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」は、コロナ禍に乗じて矛盾や偏見をさらけ出した。異国の物語なのに、人ごとではないただならなさを感じてしまう。一方日本でも、高齢者を使い捨て(「PLAN 75」)、外国人を厄介者扱いする(「マイスモールランド」)冷たい現実をエンタメの中に描いた。新進監督の意欲と問題意識が頼もしい。上半期、ぶっ飛んだのが「TITANE/チタン」。人間のあらゆるゆがみと倒錯をより合わせた果てに、反転させる驚異のダークファンタジー。残ったのが希望とは。そして何より、上半期映画界の一番の出来事は、「ひとシネマ」創刊。となってほしい。
 
シネマの週末 この1本:「TITANE/チタン」壊れて荒ぶる愛の寓話
https://hitocinema.mainichi.jp/article/csutkh323

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。