「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」 © 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

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2023.1.20

この1本:「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」 釜山の路地で緩急巧み

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

カーチェイスは映画の華。スピード感と迫力が、画面を大いにもり立てる。依頼された〝荷物〟を送り届ける運び屋映画が次々と作られるのは、その見せ場を存分に楽しめるからだろう。新しいアイデアを盛り込もうと作り手も腕を振るい、ハズレが少ない。

お国柄も表れる。派手な衝突や爆発で画面がにぎやかな米国流は、スケール感が持ち味。欧州では、石畳の狭い路地を縫って疾走するスリルが強調される。車が何台も潰れるからそれだけで製作費もかかるし、公道での撮影も大がかりで、撮影条件が整わないと作れない。その水準に、韓国も追いついた。緩みのない展開もさることながら、画(え)作りのうまさで一気に見せる。

ペッカン産業の従業員ウナ(パク・ソダム)は、時間通りに指定の場所に荷物を運ぶ「特送」のドライバー。大金を隠した金庫のカギを父親に託されたソウォン(チョン・ヒョンジュン)を乗せて、追っ手から逃げる羽目になる……という話の骨格は定石通り。悪徳警官がカギを狙い、ウナが脱北者と分かって国家情報院も参戦。追いつ追われつの仕掛けは上々だ。

見せ場はもちろん、カーチェイス。坂の多く狭い路地が交錯する釜山の道を緩急付けて走り抜け、幹線道路を疾走するウナをダイナミックなカメラの動きで見せる。カースタントの華麗さ、ウナの運転技術を示す細かいカット割り。車に乗せた〝荷物〟が驚く表情。セオリーを押さえつつヒネりを加え、映像はどれもカッコいい。

あどけないソウォンをあざとく絡ませた情感や、ペッカン産業の社長と黒人のメカニックら周囲に配した人物たちのアクの強さも、いい具合。脚本と映像の巧みな味付け、日本映画ではとても無理。ただし暴力場面は血のりが多くて、しつこく痛い。ここは好みが分かれそう。パク・デミン監督。1時間49分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(勝)

ここに注目

裏社会の運び屋、逃がし屋は「ザ・ドライバー」のライアン・オニール、「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムらが演じてきた犯罪映画の定番キャラクターだが、それを若い女優に演じさせた発想が新鮮。年の離れた姉弟のような絆が芽生えるウナと少年の逃避行は「グロリア」を彷彿(ほうふつ)とさせる。売り物のカーアクションも派手さを追求せず、路地や駐車場を舞台にしたコンパクトな設計が功を奏して切れ味抜群。華麗な運転テクはもちろん、ウナがとっさに繰り出すサバイバル術が随所に描かれ、魅力的なヒロイン活劇になった。(諭)

技あり

ホン・ジェシク撮影監督の経歴はサスペンス、ミステリー、スパイ物で埋まる。この手の職人が本気になると、思いがけない表現が飛び出す。冒頭、ウナが廃車を引き取って運転し、横道からバックで通りに出て方向変換するのを、カメラを大きく振って追う快調な出だし。最初のエピソードで客2人を拾い、追っ手をまいて港まで時間通りに届けるカーチェイスは見どころだ。海岸に建てたペッカン産業のロケセットも、不自然な影が出ないように光源を仕込んでいる。割り切りのよさと巧みなカメラの動きで、韓国の興行的成功を助けた。(渡)

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