「すべてが変わった日」

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2021.8.12

「すべてが変わった日」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1963年、米モンタナ州の牧場で暮らす中年女性マーガレット(ダイアン・レイン)と元保安官の夫ジョージ(ケビン・コスナー)が、落馬事故で息子を亡くしてしまう。3年後、息子の妻ローナと孫ジミーが危険にさらされていると知ったマーガレットは夫を説得し、ジミーらを救うためノースダコタ州へ向かう。

往年の西部劇を思い起こさせる雄大な風景に彩られたヒューマンドラマだ。ところが主人公夫婦が札付きの悪党一家と対峙(たいじ)する中盤以降、映画のムードが一変。血生臭い暴力描写をはらんだ犯罪スリラーに変容していく風変わりな展開に驚かされる。夫婦が生きるか死ぬかの激闘になだれ込むクライマックスにも、ただならぬサスペンスがみなぎる。その半面、レインとコスナーが、長年寄り添い合ってきた男女の精神的な結びつきを繊細に表現。夫婦がたどる喪失と再生の物語に痛切な情感を吹き込み、厳かな余韻を残す。トーマス・ベズーチャ監督。1時間53分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪・TOHOシネマズ梅田ほかで公開中。(諭)

ここに注目

牧場の風景から幕を開け、ロードムービーに浸っていると、じわじわと敵の異様さがあらわになる。夫婦の敵となる異様な女家長が現れ、空気は一変。入り口と出口の雰囲気のあまりの違いに驚いたが、作品をまとめた監督の手腕と、展開に説得力を与えた役者陣の好演が光る。(細)

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