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2024.1.03
「助産所、自宅で出産」の1% なぜ?どのように? 助産師に密着ドキュメンタリー
病院で生まれ、病院で死ぬ。現代日本では普通と思われている人の一生だ。しかし、例外にこそ豊かな水脈があるかもしれない。全国各地で上映されているドキュメンタリー映画「1%の風景」。1%とは、助産所や自宅での出産の割合を示している。吉田夕日監督は助産所での出産を選んだ人たちと、助産師に密着した。丁寧に映し出されるやり取りや関係性から浮かび上がるのは、「信じて待つ」ことの大切さだ。
吉田夕日監督「第2子出産がきっかけ」
吉田監督は高校卒業後、フランスに渡って映画専門学校ÉSEC PARISで学んだ。帰国後、フリーランスの映像ディレクターとして制作会社テレビマンユニオンに参加。日本国内の風土や伝統工芸、食をテーマにした番組作りに携わってきた。
映画を製作するきっかけになったのは第2子出産時、助産所を選んだ自身の経験だった。第1子のときはよく知らないまま、当たり前のように病院での出産を選んだ。第2子出産を控えていたとき、同僚女性から「自宅で出産した」という話を聞いて関心を持ち、自宅近くの助産所を調べて訪れた。助産所では、助産師が医療機関と連携しながら妊娠、出産、産後、子育ての始まりまで一貫して母子をサポートする。助産師と話すことで「自身の体に責任と自覚が芽生え、第1子のときより『私が出産するんだ』という主体的な気持ちになった」と振り返る。
「1%の風景」©2023 SUNSET FILMS
6カ月の我が子を背負ってカメラ回す
妊産婦として通った助産院で、生後6カ月の子どもをおぶいながらカメラを回すことにした。当初は明確に映画化を意識していなかったという。生まれたばかりの赤ちゃんは、それだけで尊く、見る者の心を温かくする。「まずは助産師さんの仕事、妊婦さんとの日々、命が生まれてくるところの風景を丁寧に記録しよう」との考えで、撮影は始まった。
映画の舞台は自身が通ったところともう1カ所、東京都内の二つの助産所だ。4人の母親と、支える助産師が登場する。助産所は一見、普通の住宅のようで病院とは違ったアットホームな雰囲気だ。助産師は会話をし、体をさすりながら女性に寄り添う。吉田監督も自身の経験を踏まえ、助産師の存在が「私たち家族に精神的、身体的な安定をもたらしていた」と振り返る。
「信じて待つ」に寄り添う存在
出産する場所や方法自体が、映画のテーマではない。伝わってくるのは命を産み出す女性のそばに、信頼できる誰かがいる重要性だ。映画では、吉田監督が助産師に「やりがい」について問いかけるシーンがある。助産師が「私ね、待つことが好きなの。待って待って待って……待った結果が『命』だからね。良い仕事でしょ?」と答えるのが象徴的だ。予定日は、あくまで予定。出産のタイミングは誰も分からない。信じて待つしかない。待つために、寄り添う存在が支えとなる。
撮影時は子どもも幼く、それまでとは仕事のペースやスタイルが変化していた吉田監督。だからこそ、抱いた感情がある。「小さな命を育んでいく日々を肯定したい。助産所に何があるのかを知りたい、もっと見てみたい」。助産師や妊婦は輝いていた。「この姿を記録に残しておくことが、肯定につながると思いました」
それぞれのペースで生まれ、歩んでいく小さな命。日ごろ社会では、周囲のペースに合わせることも求められる。産み育てる者は、そのギャップに戸惑うこともある。しかし、助産師と妊婦が「信じて待つ」ように、この映画は小さな命を育む行いを肯定してくれる。