「リトル・エッラ」の クリスティアン・ロー監督=鈴木隆撮影

「リトル・エッラ」の クリスティアン・ロー監督=鈴木隆撮影

2024.4.19

「リトル・エッラ」 〝最愛の人〟奪われた9歳少女「ジェラシー乗り越え成長」 クリスティアン・ロー監督

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鈴木隆

鈴木隆

9歳の少女の豊かな感情を、ユーモアたっぷりに描いたスウェーデンの「リトル・エッラ」。北欧らしい自由な空気が漂って、子供から大人まで楽しめる。公開に合わせて来日したクリスティアン・ロー監督は「小さい時に悟った小さなことが、(将来の)非常に大きなことにつながっていくと思う」と話した。

エッラは人と仲良くするのが苦手な小学生。唯一仲が良いのはおじさんのトミーだ。両親が休暇で留守の間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたのに、トミーの恋人・スティーブがオランダからやってきた。2人は英語で話すから、エッラは蚊帳の外。のけ者にされてトミーを取られてしまうと心配になったエッラは、転校生のオットーに相談。スティーブを追い返す作戦を繰り返すのだが……。


人気絵本が原作 大人にも響くように

スウェーデンの人気絵本作家、ピア・リンデンバウムの「リトルズラタンと大好きなおじさん」が原作。「わずか30ページほどの本だったので、転校生のオットーやスティーブを追い返すためのいたずらを加えた」。子供向け映画のように思われがちだが「大人にも響くようなセリフやシーンを心がけた。小学生も理解できて、大人の観客も満足できる作品にしたつもりだ」と語る。

エッラの再三にわたるいたずらにあっても、トミーは怒鳴ったりしない。映画全体にギスギスしない空気がある。「トミーは我慢強いキャラクター。エッラは自分だけに関心を向けてもらいたがっていたけれど、人の痛みを学ぶことで、自分の好きな人が他の人と幸せになることを選ぶキャラクターになっていく。エッラの成長物語になっている」

9歳でそこまで考え理解していく子供は北欧にはいるのかと聞いてみた。「コメディータッチを強調しているが、自分の欲求よりもほかの人の幸せを考え優先する子供は結構いると思う。もう少し年を重ねてティーンエージャーになると、それが友情の育み方に発展していく」と話す。北欧社会ならではの部分があるのだろうか。「スカンディナビアの国々は、ほかのヨーロッパと比べても自由度が高いと思う。大人たちの価値観や考え方が子供たちに影響を与えているのは確かだろうし、そこから学んで育ってほしいと願っている。といっても9歳の子供にそんなに大きな期待はしていないけれど」

自由度とはどんなことか。「例えば、オーガナイズされた多くのクラブがある。安全で、あまり制約がなく自由に遊ぶことができる」。こうした環境が、考え方や成長を促しているというのだ。


「リトル・エッラ」© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS

心地よくて不安のない撮影現場

これまでにも「ロスバンド」(日本公開は2022年)など若者や子供、家族の映画を撮ってきた。心掛けているのはハートとフィーリング、音楽という。「本作では、友情や愛する人を大切に思う心を中心に据えている。もしかしたら北欧的な考え方かもしれないが、人生の中のささいなこと、小さなことは、(いずれ)世界の中の大きなことにつながっていく」

いたずら好きのエッラを演じたアグネス・コリアンデルは、初めての長編映画で初主演。堂々と演じ切った。「エッラのキャスティングは、表情豊かな子供であることと、コミュニケーションがきちんととれることが大切だった」。どんな演出で彼女のリアルな演技を引き出したのだろうか。「例えば、怒りの感情といっても難しすぎるので『トミーを攻撃してみて』という感じで話した。心の中からトミーに怒りを持つように」するためだったという。

ロー監督は取材中も笑顔を絶やさない。話を聞いている側を包み込むような穏やかな語り口。子供たちにもよりやさしく接して、演出していたことが想像される。「子供と一緒に映画を撮るうえで最も大事なことは、心地良い環境作り。安全で快適、不安なくいられる場をいつも心掛けている」と話した。


同性愛カップルも自然に

この作品では同性愛の描き方がとても自然でストレートだ。北欧社会の今を反映しているということか。「その部分は原作と同じ。原作者の考え方は、愛に違いはないということ。現在の北欧では、同性愛カップルもごく自然。エッラにとってはトミーの恋人が男性でも女性でも関係ない。スティーブは最愛の人との最高の1週間を奪った憎い相手だから追い返そうとする」

ロー監督が強調したかったことがもう一つ。嫉妬心である。「若者のジェラシーを描くのはとてもエキサイティングだった」というのだ。「嫉妬という感情を表現することにワクワクした。誰もが分かる心の痛みであり、人生を通じて逃れられない。そして子供の方がクリアに出てくる。でも最後には、エッラはトミーの幸せを願うように成長していくけどね」とにこやかにほほ笑んだ。

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ライター
鈴木隆

鈴木隆

すずき・たかし 元毎日新聞記者。1957年神奈川県生まれ。書店勤務、雑誌記者、経済紙記者を経て毎日新聞入社。千葉支局、中部本社経済部などの後、学芸部で映画を担当。著書に俳優、原田美枝子さんの聞き書き「俳優 原田美枝子ー映画に生きて生かされて」。

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