ブラピ会見 新幹線の中で並んだ(左から)アーロン・テイラー・ジョンソン、ブラッド・ピット、真田広之=2022年8月23日、勝田友巳撮影

ブラピ会見 新幹線の中で並んだ(左から)アーロン・テイラー・ジョンソン、ブラッド・ピット、真田広之=2022年8月23日、勝田友巳撮影

2022.8.23

ブラッド・ピット来日 時速300キロのレッドカーペットに大喜び「また撮影してるみたいだ」 「ブレット・トレイン」

俳優デビューから35年、トップスターであり続けるブラッド・ピット。最新主演作「ブレット・トレイン」の公開に合わせ、その変わらぬ魅力を徹底分析。映画人としてのキャリアの変遷、切り口ごとのオススメ作品、人柄を感じさせるエピソードと、多面的に迫ります。

勝田友巳

勝田友巳

まさに「ブラピ様お召し超特急」。ブラッド・ピット主演の「ブレット・トレイン」公開を前にした8月23日、ピットら俳優陣を乗せた特別仕立ての新幹線が、東京・京都間を疾走。走る車内で記者会見という〝史上初〟動くレッドカーペットイベントである。
 


 

人払いした東京駅17番線ホーム

午前11時、東京駅の新幹線ホーム17番線。掲示板には「団体列車」と表示され、反対側の16番線には回送車両が停車中。ホームは総勢60人ほどの取材陣とスタッフの他は人けがなくなり、警察官が立つものものしさだ。
 
ブラインドを下ろして到着した車両に乗り込むと、車内は映画のポスターが張り巡らされた特別仕様。MC役も映画の車掌と同じ衣装だ。ブラピ来日は3年ぶり、日本が舞台の作品で、しかも世界プロモーションの最後の地。配給のソニー・ピクチャーズ、力が入りまくるのも無理はない。
 
同42分、新幹線は〝定刻〟通り出発し、走ること小一時間、ブラッド・ピット、アーロン・テイラー・ジョンソン、真田広之の出演者と、デビッド・リーチ監督が登場、トークセッションが始まった。


 

「こんな時だから、笑いが必要だ」

ピットは大きな笑顔を見せて開口一番、「また撮影してるみたい、デジャブだ」。コロナ禍のさなかの撮影は、ロサンゼルスのスタジオに3車両分のセットを作り、窓の外に投影した風景を見ながらだったという。「不思議な感じがするよ」。取材陣に「楽しんでる?」と愛想をふりまきながら、サービス精神たっぷりだ。
 
映画は伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」が原作。ブラッド・ピット演じる殺し屋レディバグは代役でカバンを運ぶ仕事を引き受けて、東京から京都に向かう超高速列車「ゆかり」に乗り込む。隣の品川駅で降りるはずが、車内で他の殺し屋たちと遭遇、殺し合いに巻き込まれるというアクションコメディー。
 
監督のリーチは、ピットのスタントダブルを務めていたこともあり、長い付き合い。ピットが脚本を読んだのは、「ロックダウンで5カ月も閉じ込められていたころ」という。一読して気に入った。
 
「デビッドは『ファイト・クラブ』の頃からの友人だし、キャラクターがユニークでいい俳優も集まった。何より笑えた。こんな時だから笑いが必要だと思ったね」
 
殺し屋の一人、タンジェリンを演じたアーロン・テイラー・ジョンソンは「日本に来られてうれしい」と大喜び。「日本で撮影できたら良かったけど、コロナ禍ではできなかった。でもいいチームで、楽しかった」
 

ブラッド・ピットと真田広之=提供写真

「サナダが出演して、映画の格が上がった」

真田広之は伝説の殺し屋エルダー役。映画の中でも一目置かれる存在だ。「日本の原作が豪華キャストで世界に発信される。うまく脚色されていて、面白くならないわけがないと飛び乗った」。ピットは「エルダーは、そこにいるだけで周りが静かになるような威厳のある人物。サナダが出演して映画の格が上がった。俳優として45年? 50年? ファイトシーンを撮り続けるなんて、すばらしい」と絶賛。
 
真田は「55年ですけど」と訂正しつつ、ピットの持ち上げように「撮影前に聞かなくて良かった、プレッシャーがすごい」。そして返礼。「ブラッドは気さくで映画への情熱があって、撮影が毎日楽しみだった。あの笑顔に包まれて、撮影現場は優雅で温かい雰囲気。柔らかいオーラでチームを引っ張っていく、特殊なエネルギーを感じました」
 
映画の「ゆかり」は、10人の殺し屋が血みどろの戦いを繰り広げながら暴走し、終点京都で荒唐無稽(むけい)な結末を迎える。日本の描写はパロディー満載だ。ピットは「日本と日本文化への愛が感じられるよ。アクションもすごいし、すばらしい時間を過ごせるよ」。
 
上機嫌のうちに20分ほどの会見を終えて、笑顔をふりまきながらレッドカーペット(が敷かれた通路)を歩き、後方の車両へと消えていった。
 

京都の大ファン!

映画の中では激しい格闘で車内が破壊され、揚げ句に爆破までされる超特急だが、特別列車は同2時前、無事に京都に到着。夕刻からは京都・二条のシネコンで舞台あいさつが行われた。
 
ピットら出演者は、会場入りする前に待ち構えたファンの求めに応じ、サインに写真撮影にと大サービス。舞台あいさつには車掌役で出演したマシ・オカ、日本語吹き替え版を担当する堀内賢雄、フワちゃんらも加わった。
 
ピットはここでも終始、大張り切り。「日本にファンがいるなんてうれしい。自分は京都の大ファン」とアピール。登壇者の間を行き来して、自身の声を担当する堀内と並んで「見分け付く?」とおどけて見せ、会場を大いに盛り上げた。
 
「ブレット・トレイン」は9月1日、全国公開。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

新着記事