「清算」伊岡瞬 四六判 

「清算」伊岡瞬 四六判 

2024.3.09

会社がなくなる!解散・清算・理不尽な異動・消えた2億円の謎、リアリティーとインパクトに満ちた「清算」

出版社が映画化したい!と妄想している原作本を担当者が紹介。近い将来、この作品が映画化されるかも。
皆様ぜひとも映画好きの先買い読書をお楽しみください。

ひとしねま

宮本貴史

理不尽な異動で未経験の仕事

明日、自分の会社がなくなる――。その時、あなたはどう振る舞いますか? 「代償」をはじめとするヒット作を発表し続け、常に読者から注目を集める伊岡瞬さんの小説「清算」の冒頭では、広告代理店「八千代アドバンス」に勤める主人公・畑井伸一が、役員たちから自社の解散と清算が決まったとひそかに告げられます。さらに総務部への異動と解散・清算業務に従事することを命じられてしまう畑井。理不尽な異動で未経験の仕事につくことになり、家族の今後にも思い悩みながら、駅前の居酒屋で焼き鳥をほおばる彼の姿が哀愁を誘います……。

幻惑、怒り、励まし

月日は止まらずに進んでいき、会社が消滅することが明かされ、騒然とする八千代アドバンス社内。社員たちの再就職や債務の処理に畑井は奔走します。横暴な指示を繰り返す専務、会社の裏事情をほのめかす前任の女性総務部長、暗躍する営業部の問題社員・・・・・・混沌(こんとん)とした状況の中で、ひとくせもふたくせもあるキャラクターたちが登場。畑井を時には幻惑し、時には怒らせ、また時には励まします。「うちの会社にもこんな人いるなあ」と思わせるようなリアリティーあふれる描写で、自然と企業ドラマのような映像が頭に浮かんできます。

サスペンスに変貌

組織に所属した人なら誰でも刺さる、そんな企業ドラマ的物語に引き込まれ、畑井に感情移入しながら読み進めていくと、あるシーンで展開は一変。会社の債務清算のために残していた虎の子の資金2億円が通帳とともに消えてしまったのです。誰が何の目的で金を持ち去ったのか? 会社がなくなるという非日常、そして誰もが欲望を隠さなくなった疑心暗鬼の状況の中で、畑井は2億円の行方を追うことに。そんな彼の目の前で、次々と八千代アドバンスをめぐる事件が巻き起こり、ストーリーは完全にサスペンスに変貌します。果たして、畑井は2億円を見つけ出し、会社に隠された秘密を「清算」することができるのでしょうか?

リアリティーとインパクト

個性的な社員たちの思惑が交錯する企業ドラマであり、さらに、消えた2億円の行方と会社の秘密をめぐるサスペンスでもあるという、二重の面白さを楽しめる「清算」。リアリティーとインパクトに満ちた本作は、映像化にぴったり。強く強くおすすめの一冊です。まずはぜひ手に取って波乱に満ちた作品世界をお楽しみください!

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ライター
ひとしねま

宮本貴史

みやもと・たかふみ
2015年、KADOKAWAに新卒入社し、映画部門、次いで法務部門、さらに角川文庫編集部での勤務を経て現在は単行本編集部に所属。「清算」作中の登記に関する描写や法務局のシーンを読んで法務部門時代の思い出がよみがえる。昨年、2億円ならぬ7億円の当選を狙い、まとまった数の年末ジャンボ宝くじを購入するが惨敗を喫した。