二十五、二十一 Netflixで配信中

二十五、二十一 Netflixで配信中

2022.4.29

先取り! 深掘り! 推しの韓流:「二十五、二十一」 沼落ちも納得 困難の中で結ぶ絆の美しさ

映画でも配信でも、魅力的な作品を次々と送り出す韓国。これから公開、あるいは配信中の映画、シリーズの見どころ、注目の俳優を紹介。強力作品を生み出す製作現場の裏話も、現地からお伝えします。熱心なファンはもちろん、これから見るという方に、ひとシネマが最新情報をお届けします。

ひとしねま

大野友嘉子

先取り!深掘り!推しの韓流

ノスタルジーとしみ入る映像美、さすがスタジオドラゴン

白色のベビーGを着けたナ・ヒド(キム・テリ)を見て、時が20年以上巻き戻ったとすぐに分かった。1990年代末、小学5、6年生だった私や友人たちもベビーG、それもこぞってホワイトを持っていたからだ。当時住んでいたアメリカでは、日本語学校の友人たちの間でベビーGが流行していた。その景色や香りがふわっと押し寄せ、小道具づかいの妙に、いきなり恐れ入った。
 
キム・テリとナム・ジュヒョクが織りなす韓国の青春ドラマ「二十五、二十一」は、そんなノスタルジックな雰囲気で始まる。袖がひじまであるビッグサイズのTシャツ、ディスコファッション、たまごっち、デビュー間もない頃のアイドルグループ神話……。ヒドの愛読マンガ「フルハウス」は、ソン・ヘギョとRain(ピ)が共演したドラマ版を知っている。
 
過去を懐かしんでちょっとセンチメンタルになった心に、映像美がしみる。緑や雨、まぶしい太陽や夜闇を生かした色彩が美しい。移ろいやすい自然が、人生のはかなさを暗示しているようでもある。うわさ通りの「沼落ち」ドラマだ。さすが、「愛の不時着」「トッケビ 君がくれた愛しい日々」などの大作を手がけてきた制作会社「スタジオドラゴン」である。
 
一方、登場人物たちを取り巻く環境は厳しく、残酷だ。時代はアジア通貨危機で世の中が沈む98年。IMF(国際通貨基金)が実施した緊縮政策で多くの人が職を失い、家を失うなか、フェンシングに夢中な高校生のヒドと、大学を休学しているペク・イジン(ナム・ジュヒョク)は出会う。
 


IMF危機に負けず「幸せになろう」

裕福な家庭で育ったイジンは、IMF危機で父の会社が倒産。家族がバラバラになり、新聞配達や貸本屋でアルバイトをして食いつなぐ生活を送る。ヒドもまた、学校の予算が削減され、フェンシング部が廃部になるという憂き目に遭っていた。2人は、IMF危機という個人ではどうしようもない不可抗力によって夢を断たれようとしている。コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにしている現代の私たちにとっても、時代に翻弄(ほんろう)されるヒドとイジンの姿はひとごとではないはずだ。
 
重たいテーマだが、暗いドラマではない。朝ドラヒロインのように明るく真っすぐなヒドと、ヒドのおかげで立ち直り、新たな道を模索するイジンのしなやかさが、まぶしい。「2人の時は、みんなには内緒で少しだけ幸せになろう」など、数々の名セリフにもしびれる。全編を通して、希望があふれている。
 
韓国ドラマの俳優陣の力量には毎度感心するのだが、それでも今回は特に舌を巻いた。ドラマ「ミスター・サンシャイン」でキム・テリが演じた悲しみを背負う孤高のヒロインからは、想像もできない天真爛漫(らんまん)を地で行くキャラクターのヒド。まさにカメレオン俳優である。そして、頼れる「オッパ(お兄ちゃん)」のイジン。ドラマ「スタートアップ」の弟感が強かったナム・ドサンからの見事な転身ぶりだ。
 

「虹」か「愛」か 絶妙の距離感

「二十五、二十一」は、そんな実力派ぞろいだからこそ成り立つドラマである。すでに多くのライターや編集者が指摘している通り、このドラマの肝は登場人物たちの絶妙な距離感だろう。ヒドに関して言えば、ストイックな母、憧れのフェンシングの選手、オンラインのチャットで悩みを打ち明ける「インジョルミ」だろうか。彼女たちとの不器用なやり取りに、こちらはジリジリしたりほんわかしたりする。
 
そして、イジンとの関係だ。互いを大事に思うヒドとイジンだが、無理に「友達」や「恋人」という型にはめない。ヒドは2人の関係を「虹」と呼び、イジンは「愛」という。筋書きだけを読むと、私のような無粋な人間はじれったく感じる展開なのだが、不思議と2人にはこの形が自然なのだと言い切れてしまう。フェンシングにおける自分の欠点を「相手との距離が取れないから」というヒドの言葉が、後々生きてくる。ともすれば陳腐になりかねない粋な台詞(せりふ)と演出を体の一部にし、ドラマを名作に昇華させたのは間違いなく俳優陣の腕だ。
 
「二十五、二十一」は、38度線をまたぐダイナミックな恋愛でもなければ、不滅の命を持つ戦士やイタリア帰りのマフィアが出てくるわけでもない。一見すると地味な作品だ。それでも「沼落ち」の声が絶えないのは、困難のなかでも前進していくしぶとさ、名前を必要としない登場人物たちの絆をうらやましく思うからではないだろうか。
 
Netflixで配信中。

二十五、二十一

コロナ禍の韓国で、ミンチェは母ヒドの日記を見つけ、ヒドの高校時代に思いをはせる。1998年、高校生のヒドはフェンシングに打ち込んでいた。経済危機で高校の部が閉鎖されると、憧れの選手がいる強豪校に転校した。一方、裕福な家庭で育ったイジンは、父親の会社が倒産、生活のためアルバイトに精を出している。イジンは新聞配達の途中でヒドと出会い、2人は交流を深めていく。

Netflix配信ドラマ。

ライター
ひとしねま

大野友嘉子

おおの・ゆかこ 毎日新聞デジタル報道センター記者。2009年に入社し、津支局や中部報道センターなどを経て現職。へそ曲がりな性格だと言われるが、「愛の不時着」とBTSにハマる。尊敬する人は太田光とキング牧師。ツイッター(@yukako_ohno)でたまにつぶやいている。
 

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