ヴォイス・オブ・ラブ ©Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf Aline Le Film Inc./Belga

ヴォイス・オブ・ラブ ©Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf Aline Le Film Inc./Belga

2021.12.23

特選掘り出し!:ヴォイス・オブ・ラブ 音楽とあふれる力で前へ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

カナダ出身の歌手、セリーヌ・ディオンの半生を、フランスの俳優で監督のヴァレリー・ルメルシエが映画化した。ディオンのコンサートに感銘を受けたそうで、脚本、監督に主演も兼ねたにとどまらず、10代から40代までを1人で演じる「快挙」というより「怪挙」を達成してしまった。

主人公の名前をアリーヌ・デューにしたのは、本人への敬意の表れ。田舎町にある子だくさんの家の、14人きょうだいの末っ子アリーヌは、小さい頃から美しい歌声で評判だった。母親と音楽プロデューサー、ギイ・クロードは才能を磨き上げ、アリーヌはスター街道をばく進する。

ルメルシエは、体は12歳なのに顔つきは中年の少女時代から、成人後のコンサートを「完コピ」する熱演ぶり。ギイ・クロードと結婚し、子どもにも恵まれ、子育てと歌手業も両立する。芸術家の伝記につきものの薬物も酒も孤独も無縁で、音楽と愛情に満ちあふれた人生を、苦悩より達成点を強調しながら描いていく。トントン拍子すぎてあっけにとられる一方、パワフルな姿に力ももらえる。2時間6分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか。31日から大阪・シネ・リーブル梅田ほかでも。(勝)