「1640日の家族」©︎ 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.

「1640日の家族」©︎ 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.

2022.7.30

1640日の家族

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

アンナ(メラニー・ティエリー)とドリス(リエ・サレム)の夫婦は兄弟2人の子どもたちと、里子のシモンを1歳半から4年半育ててきた。ある日、シモンの実父エディが月に1度の面会交流から、息子を再び手元で育てたいと申し出る。彼らが家族でいられる時間が限られる中、ある事件が起きてしまう。

ファビアン・ゴルジュアール監督が、幼少期に両親が里子を迎えて4年半一緒に暮らした経験をベースに家族の深い愛と絆を描いた。日本とフランスでは里親制度自体に違いがあるが、アンナとエディのあつれきはコミュニケーションと思い入れの隙間(すきま)から生じるもので理解できなくはない。むしろ、間を取り持つ機関の官僚的な判断に問題を感じてしまう。ただ、物語は誰をも断罪、結論を押しつけることはせず、アンナの愛情の深さを定点に、里親制度の難しさと里子の複雑な内心に寄り添う。アンナの繊細な表情とシモンのいじらしさに胸を締め付けられる。1時間42分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(鈴)

ここに注目

突き放してみればアンナは里親失格だが、シモンがこれだけ愛くるしかったら取り合いも無理はない、と思わせる演出の勝利。シモンも2人の兄も演技が達者で、表情を引き出しカメラに収めたスタッフもお見事。そのリアルさが、家族の愛情や里親制度についてしみじみ考えさせるのだ。(勝)

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