「TITANE/チタン」© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 ©Carole_Bethuel

「TITANE/チタン」© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 ©Carole_Bethuel

2022.12.20

2022年総決算 ゆく年編 勝田友巳

2022年も残りわずか。たくさんの作品が公開、配信されました。7月の上半期総決算に続いて、ひとシネマ執筆陣が1年を総まくり、「ゆく年」編は22年の10本を選出しました。返す刀の「くる年」編で、23年の期待作も紹介します。題して「ひとシネマ的ゆく年くる年」。年末年始の鑑賞ガイド、新年のカレンダーとしても、ご活用を。

勝田友巳

勝田友巳

「インフル病みのペトロフ家」(キリル・セレブレンニコフ監督)

「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」(ラドゥ・ジューデ監督)
「PLAN 75」(早川千絵監督)
「マイスモールランド」(川和田恵真監督)
「神は見返りを求める」(吉田恵輔監督)
「東京オリンピックSIDE:A/SIDE:B」(河瀬直美監督)
「やがて海へと届く」(中川龍太郎監督)
「TITANE/チタン」(ジュリア・デュクルノー監督)
「みんなのヴァカンス」(ギヨーム・ブラック監督)
「野球部に花束を」(飯塚健監督)

 

世の中のザワザワが映っていた

コロナ禍は3年目に突入するしウクライナで戦争は始まるし、汚職やゴマカシは次々と明らかになるし、2022年は落ち着かない1年だった。映画は社会の窓、鏡。そんなザワザワが映り込んでいた作品を選んでみた。
 
「アンラッキー・セックス」や「インフル病みのペトロフ家」は、疫病から社会のよどみや歴史の影に視野を広げ、転んでもただで起きない表現者の想像力を実感。「PLAN 75」「マイスモールランド」は、高齢化や入管制度などを取り込んだドラマ作りが頼もしい。SNS社会のブラックコメディー「神は見返りを求める」の毒にしびれた。
 
賛否分かれる「東京オリンピック」だが、私は肯定派。五輪のユートピア幻想とカネまみれ政治まみれの現実のせめぎ合いが、河瀬監督も巻き込んだ混乱として映し出されていた。昨今の大疑惑で「SIDE:C」も期待したくなる。
 
女性2人の友情物語の背景に東日本大震災があった「やがて海へと届く」。他にも震災を遠景とした作品が目立ち、11年を経て震災が内面化されていると感じた。男性支配構造に異を唱える映画が世界中から噴出し、どれも勢いと主張があった。「TITANE」はその過激な最右翼。
 
そんな中で「みんなのヴァカンス」「野球部に花束を」のようなノホホンとした映画に出合う。本当にホッとしました。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。