2022年もはや7月。上半期の映画界では、新作に加えてコロナ禍で延期されていた作品がようやく公開され、ヒットも続発。映画館のにぎわいも戻ってきた。ひとシネマ執筆陣が5本を選び、上半期を振り返ります。
2022年上半期 ひとシネマ的総決算
① 「シャドウ・イン・クラウド」(ロザンヌ・リャン監督) ② 「神は見返りを求める」(吉田恵輔監督) ③ 「林檎とポラロイド」(クリストス・ニコー監督) ④ 「不都合な理想の夫婦」(ショーン・ダーキン監督) ⑤ 「峠 最後のサムライ」(小泉堯史監督) 第二次大戦の空戦映画にモンスターとフェミニズムとアクションをブッ込んだ「シャドウ・イン・クラウド」の痛快さは、今年上半期でも唯一無二。B級にカテゴライズされるとしても映画らしい興奮に満ちていて、クロエ・グレース・モレッツVS空の怪物の対決はおそらく2022年のベストバトルになる。 「 神は見返りを求める」 ©2022「神は見返りを求める」製作委員会 悪意と共感が矛盾なく共存 昨年「BLUE/ブルー」「空白」が公開された吉田恵輔監督の「神は見返りを求める」は、ある意味で文芸路線だった前作とは正反対に振り切った、皮肉と諧謔(かいぎゃく)に満ちたブラックコメディー。悪意と共感が矛盾なく共存する吉田作品の空気感は、ギスギスしていてもやはり心地よい。「峠 最後のサムライ」については、正直いろんな問題があって、原作を知らない人の多くは置いてきぼりになると思うのだが、黒澤明組直系の手間暇かけた映像のたたずまいや、苛烈な生涯を駆け抜けた河井継之助の「最後の1年間」にフォーカスすることで立ちのぼる「滅びの前の穏やかな時間」に得難い魅力を感じた。 シネマの週末:神は見返りを求める
村山章
2022.7.11
① 「スティルウォーター」(トム・マッカーシー監督) ② 「KAPPEIカッペイ」(平野隆監督) ③ 「MEMORIA メモリア」(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督) ④ 「ブラックボックス:音声分析捜査」(ヤン・ゴズラン監督) ⑤ 「オフィサー・アンド・スパイ」(ロマン・ポランスキー監督) 見逃したものばかりだが 今年の劇場体験を顧みたとて思い浮かぶのは見逃した映画のことばかり。あれもこれも見られていない、落ち穂拾いもできていない、とてもではないが満足には選べない。けれど、どこかで観念して、その時々で面白がった記憶をたぐり寄せてみるしかない。 「KAPPEI カッペイ」©2022 映画『KAPPEI』製作委員会 ©若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス) たかが半年ではあるが、情けないことにすでに見た映画の多くを忘れてしまっているし、ろくにメモすらとっていないことが悔やまれるが、時におぼろげながら印象だけは強固に残っていることがあり、それは「忘れがたい」ということなのだろう。序列をつける苦労はこたえるので並びは便宜上のもの──実態は鑑賞順である。また、「今年上半期劇場公開新作」という唯一の選出条件ゆえ漏れたが「ジャッカス FOREVER」(配信のみ)、「Our Friend/アワー・フレンド」(昨年見逃し今年見た)もすばらしかった。 映画の推し事:週末の戦士が「平時」の東京に集結!「KAPPEIカッペイ」
髙橋佑弥
①「ライダーズ・オブ・ジャスティス」(アナス・トマス・イェンセン監督) ②「春原さんのうた」(杉田協士監督) ③「夜を走る」(佐向大監督) ④「MEMORIA メモリア」(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督) ⑤「あなたの顔の前に」(ホン・サンス監督) 「春原さんのうた」 アケルマン特集 若者でにぎわい ①は北欧随一の天才脚本家アナス・トマス・イェンセン、5年ぶりの監督作。欠陥だらけの人間たちが繰り広げる破滅的な暴走劇でありながら、鑑賞後には清らかなおとぎ話に触れたような余韻が残る。邦画の②③は作風がまったく違うが、ごく普通の日常の裂け目に潜む〝不穏な別次元〟を表出させたかのような異形の2作品。アピチャッポン・ウィーラセタクンの摩訶(まか)不思議な超常現象映画④、一日の出来事を淡々とつづった映像世界に底知れない神秘性が感じられるホン・サンスの⑤にもゾクゾクさせられた。 特筆すべきトピックは、ヒューマントラストシネマ渋谷の「シャンタル・アケルマン映画祭」が連日大盛況だったこと。未見のままだったアケルマン作品を鑑賞できて個人的にもうれしい企画だったが、なぜ「ブリュッセル 1080 コメルス河畔通り 23番地 ジャンヌ・ディエルマン」にあんなにも大勢の若い映画ファンが押し寄せたのか? 上半期最大のミステリーである。 シネマの週末 特選掘り出し!:「ライダーズ・オブ・ジャスティス」 自らの心の闇と向き合う
高橋諭治
2022.7.09
① 「TITANE/チタン」(ジュリア・デュクルノー監督) ② 「ニューオーダー」(ミシェル・フランコ監督) ③ 「PLAN 75」(早川千絵監督) ④ 「アンラッキー・セックスまたはいかれたポルノ」(ラドゥ・ジュデ監督) ⑤ 「マイスモールランド」(川和田恵真監督) 不穏な空気映画にも漂う コロナ禍の出口がなかなか見えないのに、ウクライナでの戦火が伝わりその影響が生活にも及び、世の中の不安な気分は募るばかり。映画に映った社会も不穏な空気が漂っているような。 「ニューオーダー」 ©2020 Lo que algunos soñaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici 皮肉で希望のないディストピアを描いた「ニューオーダー」はメキシコの現実を映し、ルーマニアの「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」は、コロナ禍に乗じて矛盾や偏見をさらけ出した。異国の物語なのに、人ごとではないただならなさを感じてしまう。一方日本でも、高齢者を使い捨て(「PLAN 75」)、外国人を厄介者扱いする(「マイスモールランド」)冷たい現実をエンタメの中に描いた。新進監督の意欲と問題意識が頼もしい。上半期、ぶっ飛んだのが「TITANE/チタン」。人間のあらゆるゆがみと倒錯をより合わせた果てに、反転させる驚異のダークファンタジー。残ったのが希望とは。そして何より、上半期映画界の一番の出来事は、「ひとシネマ」創刊。となってほしい。 シネマの週末 この1本:「TITANE/チタン」壊れて荒ぶる愛の寓話 https://hitocinema.mainichi.jp/article/csutkh323
勝田友巳
① 「流浪の月」(李相日監督) ② 「ベイビー・ブローカー」(是枝裕和監督) ついこの前2022年が始まったと思ったら、もう下半期に突入し、上半期を振り返る時期になっていることに愕然(がくぜん)としている。あまり本数を見られていないため、イレギュラーな形で恐縮ながら2本を挙げた。 「ベイビー・ブローカー」 © 2022 ZIP CINEMA CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED 時代に思いはせるきっかけに 前者は「未成年の誘拐」、後者は「子供の養育放棄と売買」が、直接的なテーマ。どちらの作品もヘビーなテーマを扱っているけれども、共通している裏テーマは、「世に出ている事実が必ずしも真実とは限らない」であると個人的に思う。どんな物事も当事者のひとりひとりに真実がある、という当たり前ではありながら、普段あまり念頭に置いていなかったことを映像で突き付けられた感があり、現在、世界のどこかで起こっている問題や争いに思いをはせることになるという、ある意味時代を映し出すきっかけになるような作品だと思う。そして、2022年後半はもっと劇場に足を運んで、映画界を盛り上げる一助になりたいと反省しています(笑)。
後藤恵子
① 「北新宿2055」(宮崎大祐監督) ② 「リング・ワンダリング」(金子雅和監督) ③ 「サンライズ」(F・W・ムルナウ監督、1927年) ④ 「東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B」(河瀬直美監督) ⑤ 旧作も誰かにとっての新作となるかもしれない 数字は順位ではなく鑑賞順。2022年上半期総決算であるにもかかわらず、映画祭で先行公開された作品や、生伴奏付きで再上映されたサイレント映画(旧作)を入れるのはいかにも行儀が悪い。だが、どのみちすべての新作映画を見られるわけではないのだから、その期間にスクリーンで出会えた作品には十分に資格があると思う(それもまた巡り合わせである)。同時に、再上映される旧作は常に誰かにとっての新作となる可能性があることも忘れないでおきたい。 「 東京2020オリンピック」 ©2022-International Olympic Committee- All Rights Reserved. ほかによかった映画に「死刑にいたる病」(白石和彌監督)、「シン・ウルトラマン」(樋口真嗣監督)、「トップガン マーヴェリック」(ジョセフ・コシンスキー監督)、「ベイビー・ブローカー」(是枝裕和監督)などがあるが、絞りきれなかった。見損ねた映画のための席を空けておく意味でも、あえて5番目は空欄のままにしておく。 感情を紡いだ美しい敗者の物語「東京2020オリンピック SIDE:A」:よくばり映画鑑賞術 壮絶な負け戦の記録 歴史の一瞬の閃き「東京2020オリンピック SIDE:B」:よくばり映画鑑賞術 インタビュー:河瀬直美 100年後の観客に思いをつなぐ「私が見た時代の記録」
伊藤弘了
2022.7.08
① 「フタリノセカイ」(飯塚花笑監督) ② 「鈴木さん」(佐々木想監督) ③ 「リング・ワンダリング」(金子雅和監督) ④ 「流浪の月」(李相日監督) ⑤ 「ハケンアニメ!」(吉野耕平監督) 自由精神きらびやかに開花 生活の制限が想像力まで脅かすコロナ禍に抵抗しているのか。映画界では社会の古い慣習に立ち向かうクリエーターの自由精神がきらびやかに開花した。彼自身LGBTQの飯塚花笑は制度の限界や世間の偏見に向き合う愛の物語「フタリノセカイ」で2022年の門を開き、かねがねカンヌで腕を認められていた佐々木想が「鈴木さん」で思考しない大衆に警鐘を鳴らしながら後に続いた。自然と人間の関係性に注目してきた金子雅和は時空を越えるストーリーテリング「リングㆍワンダリング」で今日を洞察した。 6年の沈黙を破り、ゴッホを連想させる強烈で美しい作風で帰ってきた李相日の「流浪の月」もうれしい。そして上半期を締めるのは、アニメと実写を行き来しながら世界の人々を感嘆させた「ハケンアニメ!」の吉野耕平。超短編を作るシネマキッドだった彼の自己反映的な作品は、夢見る全ての人々に訴える。「あきらめるな。フレームの外にいる我々こそが主人公なのだ」
洪相鉉
① 「国境の夜想曲」(ジャンフランコ・ロージ監督) ② 「ドンバス」(セルゲイ・ロズニツァ監督) ③ 「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」(チャン・イーモウ監督) ④ 「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督) ⑤ 「リコリス・ピザ」(ポール・トーマス・アンダーソン監督) 映画を引きずり回す暴力 内戦、独裁、戦争が映画を引きずり回している。ジャンフランコ・ロージのドキュメンタリー「国境の夜想曲」は地名や固有名詞を取り去った大胆な構成によってシリア内戦の不条理を観客に突きつける、「海は燃えている」に続く傑作だ。ウクライナ東部 のドンバスにおける親ロシア派勢力の支配を捉えた「ドンバス」も観客への説明を一切省いているため、占領統治の不条理さが鮮明に捉えている。 「ドンバス」©︎MA.JA.DE FICTION ARTHOUSE TRAFFIC JBA PRODUCTION GRANIET FILM DIGITAL CUBE チャン・イーモウの「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」はあふれる映画愛の下に文化大革命のもとの強制的大衆動員の不条理がのぞいていた。政治が振り回す混乱した世界のなかではプライベートな人のつながりを求めてしまう。マイク・ミルズの「カモン カモン」におけるホアキン・フェニックスと少年の繊細な表現、そしてポール・トーマス・アンダーソンの「リコリス・ピザ」でスクリーンを駆け回る若い男と女の姿に、荒れた世界のなかの救いを見て息をつく半年だった。 シネマの週末 この1本:「国境の夜想曲」戦禍を生きる声なき声
藤原帰一
①「ベルファスト」(ケネス・ブラナー監督) ②「ハケンアニメ!」(吉野耕平監督) ③「はい、泳げません」(渡辺謙作監督) ④「ちょっと思い出しただけ」(松居大悟監督) ⑤「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督) ハリウッド大作は〝殿堂入り〟 「トップガン マーヴェリック」と「ゴーストバスターズ/アフターライフ」「スパイダーマン:ノー・ウエイ・ホーム」「THE BATMANザ・バットマン」は殿堂入りということでここでは割愛。 「ハケンアニメ!」 ©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会 ⑤男やもめのラジオジャーナリストがおいっ子によって家族と世界をつなげ直してゆく。もつれた糸の玉がそれぞれ1本の糸に解けていくような、そんな後味が良かった。④1年の同じ1日だけをさかのぼっていく仕掛けを、何の説明もせずに「丁寧に」成立させた松居大悟監督の力量に敬服。③登場人物がみな、どこか欠けていて、主人公がただ1点、泳げるようになることで全てが前向きに変わる物語が好ましい。②人々が前向きに仕事に取り組む姿に、おえつするほど感動。涙を何度も何度も絞り取られた。①あれだけ憎んでいた故郷・北九州市若松区に帰りたくて仕方がなくなるほど、望郷の念をかき立てられた。 シネマの週末 この1本:「ベルファスト」 輝く日常むしばむ暴力 藤原帰一のいつでもシネマ:「ベルファスト」北アイルランド紛争で失われた楽園と平和への思い
宮脇祐介
① 「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督) ② 「林檎とポラロイド」(クリストス・ニク監督) ③「GAGARINE/ガガーリン」(ファニー・リアタール、ジェレミー・トルイユ監督) ④「TITANE/チタン」(ジュリア・デュクルノー監督) ⑤「マクベス」(ジョエル・コーエン監督) 日本映画に関しては仕事柄距離も近く、純粋な作品のみとの対話が成立しないため今回は除外させていただいた(正直、入れると10本でも全く足りない……)。そのうえで選出した5本は、個人的な思いと強く結びついた作品ばかり。 「林檎とポラロイド」 ©︎2020 Boo Productions and Lava Films エモさとの距離感 A24×ジョエル・コーエン監督の「マクベス」は、お正月休みに映画館で見た作品。つまり、僕の「2022年映画始め」である。Apple TV+配信だが、期間限定で劇場公開。新宿ピカデリーの大スクリーンで映像美を堪能し、映画の素晴らしさを再体感した。「カモン カモン」は敬愛してやまないマイク・ミルズ監督の新作で、ずうっと待っていた1本。この先も色あせることはないだろう。「TITANE/チタン」は終始強烈な映画だが、終盤には(自分でも理解できないが)泣いてしまった。「林檎とポラロイド」「GAGARINE/ガガーリン」は新世代の台頭を強く感じた作品群。「映像的な感度」「〝エモさ〟との距離感」「作劇のテンポ」など、学ぶことばかりだった。 シネマの週末:「カモン カモン」 藤原帰一のいつでもシネマ:「カモン カモン」 ほんとうの気持ちを言葉にするまで
SYO
2022.7.07
①ユンヒへ(イム・デヒョン監督) ②なん・なんだ(山崎晋平監督) ③春原さんのうた(杉田協士監督) ④麻希のいる世界(塩田明彦監督) ⑤わたし達はおとな(加藤拓也監督) 「なん・なんだ」©なん・なんだ製作運動体 中高年の愛欲、エネルギー 気になった女優を中心に選んだ5本。「ユンヒへ」の中村優子は歩く姿、たたずまい、セリフの出し方など一挙手一投足が気になる女優。どんな役もこなす力量はもっともっと高く評価されるべきだ。日本生命のCMでもその一端が見える。「なん・なんだ」の烏丸せつこは中高年の消えることのない愛欲、エネルギーを噴出させて地に足が着いている。同作品の和田光沙も負けず劣らず。本作のみならずどの作品でも助演賞候補になっておかしくない実力派。 「春原さんのうた」の荒木知佳は、さりげない存在感が圧倒的。声が醸し出す空気感で独特の世界を創り出す。杉田協士監督の非情な演出に負けない力強さにうなった。「麻希のいる世界」の日高麻鈴は10代特有のえん世観が作品の肝になっていて、1970年、80年代日本映画の味わいも感じた。「わたし達はおとな」の木竜麻生はこの作品でさらにグレードアップ。ラストシーンは「もう頬づえはつかない」をほうふつとさせて大女優の片りんも。 シネマの週末:ユンヒへ
鈴木隆
① 「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督) ② 「コーダ あいのうた」(シアン・ヘダー監督) ③ 「ガンパウダー・ミルクシェイク」(ナボット・パプシャド監督) ④ 「スティルウォーター」(トム・マッカーシー監督) ⑤ 「THE BATMAN ザ・バットマン」(マット・リーブス監督) 見るべきテーマと響く歌 コロナ禍をきっかけに試写室や劇場に行く機会が激減し、モニターで映画を視聴するスタイルが自分のスタンダードになってしまった。そんな中、試写室で鑑賞した「THE BATMAN」の不穏な重低音の特別な余韻が今も体に残る。選外だが「トップガン マーヴェリック」のGを感じる飛行シーンも、劇場で映画を見る醍醐味(だいごみ)を呼び覚ます。 「コーダ あいのうた」 © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS 「スティルウォーター」と「カモン カモン」は、自分の価値観がほぼ固まっている中年男性が、他者との出会いと交わりにより新たな視点を獲得する様に心を動かされた。トム・マッカーシーはサスペンスフルに、マイク・ミルズは合わせ鏡で自分を見つめるようにと、それぞれの作家性を存分に発揮している。「コーダ あいのうた」は、今の時代に見るべきテーマとエモーショナルな歌唱シーンとを兼ね備えた良作だ。「ガンパウダー・ミルクシェイク」は、何かにねじ伏せられそうになったとき用に、心の薬箱に常備しておきたい1本。
須永貴子
① 「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」 91億470万円 4月15日公開 ② 「トップガン マーヴェリック」 76億3435万円 5月27日公開 ③ 「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」 45億7000万円 4月8日公開 ④ 「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」 41億8500万円 1月7日公開 ⑤ 「シン・ウルトラマン」 41億6593万円 5月13日公開 (数字はいずれもひとシネマ調べ。7月までの集計値) 「トップガン マーヴェリック」© 2022 PARAMOUNT PICTURES. CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED. 待望の洋画大作がようやく登場 映画館のにぎわいが戻ってきた。2020、21年はコロナ禍の長く暗いトンネルでもがいた映画界も、22年は年明けから快走。ここまで過去最高の年間興行収入を記録した19年の8割を維持、このままの勢いなら2000億円を回復しそうだ。 コロナ禍直前の19年は、年間興収2611億8000万円と過去最高、年間映画人口も1億9491万人と映画界念願の2億人まであと一息と迫った。達成確実と盛り上がって20年を迎えたところでの、新型コロナウイルス感染拡大だった。 映画館閉鎖にいたる前代未聞の危機的状況の中、期待の大作、話題作が次々と公開を延期。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒットに救われたものの、20年の映画人口は1億613万人とほぼ半減。21年は「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が気を吐き、19年比6割程度まで回復したが、大作がお蔵入りしたままの洋画興行は同7割減と壊滅状態だった。 それでも21年後半には映画館の多くが通常営業に戻り、年末には「劇場版 呪術廻戦0」が期待通りのヒット。勢いがついた22年は「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」で幕を開け、世界公開から3週間遅れながら、「呪術廻戦0」を追い落としてロケットスタート。ここまで興収41億円を上げている。 「ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密」© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R. 秋以降も期待 4月にはシリーズ3作目、4年ぶりの新作となった「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」が好発進し、翌週にはシリーズ第25作「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」がチャートの首位を奪取、いずれもシリーズ最高を記録する快進撃となった。 そして5月、公開延期されていた大作が立て続けに封切られた。19年の製作発表から期待が高まっていた「シン・ウルトラマン」は、21年の公開予定から1年遅れ。情報を小出しにしてマスコミ向けの試写もしない秘密主義が奏功したか、すでに興収41億円を超えて「ファンタビ」に迫る。 「トップガン マーヴェリック」はその2週後の公開だった。コロナ禍前からの製作遅れに加え、トム・クルーズが劇場公開にこだわって幾度も公開を延期。この間も予告編を流し続けて映画ファンをじらしにじらし、公開直前にはトム・クルーズが来日。こちらは露出を極大化する戦術で大成功。公開3週目で「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」に首位を譲ったものの、翌週には奪還。公開6週目の7月第1週も、興収の前週比が8割を維持して「名探偵コナン」を猛追、興収100億円も視野に入る。 7月には「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」「キングダム2 遙かなる大地へ」、8月は「ONE PIECE FILM RED ワンピースフィルムレッド」、秋以降も「すずめの戸締まり」「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」など期待作が続く。我慢を重ねた映画ファンも、一気に忙しくなりそうだ。
ひとシネマ編集部
2022.7.06