「ケイコ 目を澄ませて」©2022 「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会COMME DES CINÉMAS

「ケイコ 目を澄ませて」©2022 「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会COMME DES CINÉMAS

2023.1.31

第77回毎日映画コンクール 選考経過と講評 作品部門 田中絹代賞 特別賞ほか

毎日映画コンクールは、1年間の優れた映画、活躍した映画人を広く顕彰する映画賞。終戦間もなく始まり、映画界を応援し続けている。第77回の受賞作・者が決まった。

第77回毎日映画コンクール各賞の2次選考の経過と、選考委員による講評を紹介する。

日本映画大賞 「ケイコ 目を澄ませて」
日本映画優秀賞 「夜明けまでバス停で」



「夜明けまでバス停で」©2022「夜明けまでバス停で」製作委員会

候補はほかに「ある男」「さがす」「PLAN 75」。決め手に欠け、それぞれの長短が指摘された。「ケイコ 目を澄ませて」に「真摯(しんし)で誠実」「主人公の声にたどり着けないもどかしさ」。「さがす」には「作り手の強い意欲を感じる」「共感できない」。「PLAN 75」は「もしもの世界を生活描写で積み重ねた」「社会的テーマがアート性と合致しない」。「夜明けまでバス停で」は「コロナ禍を逆手に取り、メッセージを伝えた」「セリフで言い過ぎ」など。推す声の少なかった「ある男」「PLAN 75」を外し、討議続行。まず全員が推した「ケイコ」を大賞に選出。「夜明け」が「22年にしか作れない、時代を記録した作品」との評価でまとまり、優秀賞に。

<講評>22年の日本の映画界はアニメーション映画が席巻した観もあるが、キラリと光る実写映画にも今日の課題が鋭くきざまれていた。大賞に選ばれたのは、映像、音響に緻密な工夫をこらした「ケイコ 目を澄ませて」。聴覚障害をもつ女性プロボクサーを主人公に、抑制のきいた演出で、そのたたずまいを丸ごと差しだしてみせた。三宅唱監督の到達点であり、これからへの出発点だろう。

優秀賞の「夜明けまでバス停で」は、劇映画として強いメッセージを発している。実際にあった悲惨な事件をもとに、社会的、時事的な主題をおりこみ、反骨の志も見せつつ、楽しめる作品になっていた。ベテラン高橋伴明監督の円熟の技である。「さがす」は一部に強く押す意見もあったが、大勢を占めるには至らず、「ある男」「PLAN 75」も監督の今後に期待することになった。(佐伯知紀)


田中絹代賞 寺島しのぶ=丸山博撮影

田中絹代賞 寺島しのぶ

<講評>女優として円熟度を増しており、2022年には、「あちらにいる鬼」で瀬戸内寂聴を演じ、実際にてい髪して話題になった。父は歌舞伎俳優の七代目尾上菊五郎、母は女優の富司純子。富司純子は第54回毎日映コンで田中絹代賞を受賞しており、母娘で同賞を受賞する栄誉に輝く。デビュー以来、体当たり的な演技は評価が高く、「赤目四十八瀧心中未遂」と「キャタピラー」で毎日映コン女優主演賞を2度受賞。「キャタピラー」では、女優賞にあたるベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したが、これは1975年の田中絹代(「サンダカン八番娼館 望郷」)に次ぐ快挙だった。(野島孝一)



「ベルファスト」 Ⓒ2021 Focus Features, LLC.

外国映画ベストワン賞 「ベルファスト」

1969年のベルファストを舞台に、少年の目から見たアイルランド紛争を描く。ベルファスト出身のケネス・ブラナー監督が、自身の少年時代を回顧した。9歳のバディはブラナー監督の分身だ。その目を通して、紛争と同時に少年の日常を丹念に描写した。愛情深い両親、祖父母、思いを寄せる女友達。楽しみは、父親と映画を見に行くこと。一家は故郷を離れる決断をし、バディにも別れが訪れる。時代の荒波にもまれる少年の成長を、モノクロの映像でみずみずしく描き出した。(勝田友巳)

◇2次選考投票結果

ベルファスト 17
リコリス・ピザ 16
トップガン マーヴェリック 14
アネット 11
コーダ あいのうた 11

特別賞 中島貞夫

<講評>京都市民映画祭新人監督賞を受賞したデビュー作「くノ一忍法」以来、「893愚連隊」「瀬降り物語」など、東映京都撮影所にどっしりと腰を据えて60本を超える映画を監督。その全てに映画への情熱と愛があふれている。後進の育成にも力を注ぎ、2019年公開「多十郎殉愛記」の撮影では、80歳過ぎてもなお衰えぬ創作意欲を若いスタッフに示した。また、NPO法人京都映画俱楽部理事長、京都国際映画祭実行委員会名誉実行委員長として、長年広い視野から京都映画映像文化の維持と振興普及活動に先頭を切って取り組まれ、尊敬の念を禁じ得ない。(大林丈史)


「チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」©「チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会


TSUTAYA DISCAS映画ファン賞

日本映画部門「チェリまほTHE MOVIE30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」
外国映画部門「トップガン マーヴェリック」