エルヴィス© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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2022.7.07

エルヴィス

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

伝説的なスター、エルヴィス・プレスリーの人生に、「ムーラン・ルージュ」で知られるバズ・ラーマン監督が迫った。いかにしてセクシーなパフォーマンスやビジュアルが生まれたのか、謎の死の裏側で何が行われていたのか。

監督は持ち味である豪華絢爛(けんらん)な映像を駆使し、スターが放つエネルギーとともに、消費される側としてのエルヴィスの物語を周辺から解き明かしていく。ルックス的には似通っていないものの、本人の映像を研究し尽くしてカリスマ性あふれるパフォーマンスを見せたオースティン・バトラーはもちろん、強欲なマネジャーを演じきったトム・ハンクスの怪しい存在感も、この伝記映画に奥行きを与えている。

女性たちが恍惚(こうこつ)とした表情を見せるコンサートの場面では、いや応なく熱狂の渦のただ中にのみ込まれるような感覚に。体力が奪われる作品ではあるが、スターという存在の光と影を見つめ、鮮やかにスクリーンに焼き付けた映画であることは間違いない。2時間39分。東京・丸の内ピカデリー、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

ラーマン監督らしく押しが強く、技巧過多の映像に辟易(へきえき)することしばしばだったが、見る者をその場に引き込むようなステージシーンの臨場感は並外れている。エルヴィスと米社会の〝影〟に迫り、ハンクス扮(ふん)する謎めいた興行主にも光を当てたダークなドラマも歯ごたえあり。(諭)