「プアン/友だちと呼ばせて」©2021 Jet Tone Contents Inc.All Rights Reserved.

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2022.8.05

プアン/友だちと呼ばせて

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ニューヨークでバーを経営するボス(トー・タナポップ)に、かつての親友で今はタイに暮らすウード(アイス・ナッタラット)から電話がかかってくる。白血病で余命宣告を受け、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。ボスはウードがタイで元カノを訪ねる旅の運転手となって、思い出をたどり心残りに決着をつける手助けをするが……。

若い男女の傲慢さや嫉妬、傷ついた日々をカセットテープの音楽やしゃれたカクテルで包み込んだ。ニューヨークやタイの風景もあいまって、ノスタルジックで甘さと苦さがほどよく混ざり合った感情を軽快なテンポで見せる。シンプルだがさりげないラストも心地よい。

ただ、全編、特に後半に行くほど男目線のストーリーラインが気になり、男性の恋愛観が幅をきかす。ボスとウードの友情もひねりはきいているものの、女性は置き去りにされたような気持ちになるかもしれない。「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤ監督。2時間9分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

視点の転換の妙もさることながら、カーウァイ監督の絶大な影響を感じさせるノスタルジックな映像が魅力的。「ブロークン・フラワーズ」のように元恋人を訪ねる行動には賛成できないが、甘い映像と音楽の魔法にかけられ、いつの間にか2人の旅の同行者になる面白さがある。(細)