毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.5.14
マイ・ニューヨーク・ダイアリー
1990年代のニューヨーク。作家志望のジョアンナ(マーガレット・クアリー)は老舗の出版エージェンシーに就職。マーガレット(シガニー・ウィーバー)のもとで、編集アシスタントとして働くことになる。彼女に任されたのはJ・D・サリンジャーへのファンレターを読み、定型文の返事を書くこと。さまざまな人生が透けて見えるファンレターを読むうちに、自分の文章で手紙をつづり始める。
小説家、ジョアンナ・ラコフの自叙伝「サリンジャーと過ごした日々」を映画化。厳しい上司と新人アシスタントの物語は「プラダを着た悪魔」を思わせるが、ふたりの関係にはもっと温度が感じられる。恋愛と仕事の間で揺れ、なかなか夢に近づけない自分にもどかしさを感じる普遍的なヒロインを演じたクアリーが、みずみずしい印象を残した。
ニューヨークの街の風景や文学界の雰囲気、クラシカルでありながらモダンなファッションの数々が目を楽しませてくれる。
フィリップ・ファラルドー監督。1時間41分。東京・新宿ピカデリー、大阪・テアトル梅田ほか。(細)
ここに注目
おしゃれなファッションに身を包み、作家の夢を追うジョアンナがキラキラとまぶしく見える。彼女の日記を読み進めるように物語は展開し、さわやかな余韻が残る。謎のベールに包まれたサリンジャーの晩年の様子も垣間見え、彼のファンにも思いがけない発見があるはずだ。(倉)